6年ぶりの復活!!新型アストンマーティン ヴァンキッシュはどう変わったのかこの目で確かめて来た。
アストンのV12への想い
先月の9月2日にアストンマーティンが新型ヴァンキッシュを発表した。
先代のヴァンキッシから約6年の月日が経った今、V8エンジンへとダウンサイジングの可能性があったがティザー映像でV12エンジンの搭載を知った時には、
「アストンマーティンは嬉しい嘘を付いてくれるな」
と、思っていた。
それもその筈でV12エンジンは先代のV12 ヴァンテージを最後にV12エンジンの生産は終了すると告知されていてので、思わぬサプライズであった。
年々厳しくなる排ガス規制を乗り越えた新型ヴァンキッシュを見に先日アストンマーティン銀座へと足を運んできた。
Aston Martin VANQUISH
関東ではアストンマーティン青山ハウスで先に展示されていたが、スケジュールの関係で見に行く事が出来ずに落胆していた。
しかし、アストンマーティン銀座に展示されるとInstagramに投稿されていたので予約を取っていたのだが先ずは2代目ヴァンキッシュを軽く紹介したい。
量産されたアストンマーティンの中でも特に美しいボディデザインを持つ2代目ヴァンキッシュはマレク・ライヒマンによって誕生した。
以下アストンマーティンヴァンキッシュの諸元表となる。
全長×全幅×全高 | 4,730×1,910mm×1,295mm |
車両重量 | 1,739kg |
エンジン型式 | AM29 |
最高出力 | 2012~2014 573PS 2014~2018(Sを除く)576PS |
最大トルク | 630N・m |
エンジン種類 | 6.0L V12エンジン |
総排気量 | 5,000cc |
トランスミッション | 2012~2014 6速AT 2014~2018 8速AT |
ヴァンキッシュはボンネットの下に自然吸気のV12エンジンをフロントミッドに積んでいる。排気口から素晴らしい快音を奏でる6.0リッターV12エンジンは2014年末までに製造された車では565PS、それ以降の年は568PSを発生させた。
またトランスミッションはZF製の6速であるタッチトロニック2又は同じZF製で8速となったタッチトロニック3が採用されている。
マイナーチェンジ前の6 速はやや扱い難い印象があるという事だが 、
BMW 、アウディ、ジャガー、クライスラーの多くのモデルに搭載され、優れた結果を出しているZFの 8 速ATはヴァンキッシュでも同様に優れた反応速度を体験させてくれるというが、
発進時やカーブからの立ち上がり時にまだ若干の改良の余地があるとの意見もある。
価格はタッチトロニック3の方が300~400万円高く最上級モデルのヴァンキッシュSとなると2,150~2,500万円で取引されている。
ベースも含め、アストンマーティンの中でも値崩れし難いモデルとなっている。
ヴァンキッシュには2004年以降からアストンマーティンの多くのモデルを支えてきた伝統のVHプラットフォームが採用されているが、2ドアクーペではヴァンキッシュが最後となっている。
Aston Martin NEW VANQUISH
直近で2回目の来店となるが、入口のドアは相変わらず重厚な鉄扉のような重さを感じる程に開けるのに躊躇する。
アストンマーティンを新車で買えるような経済的余裕がある人が入るべき場所だと思うが、ヴァンキッシュをじっくり見たいという欲求には逆らえない。
重い扉を開き遂にヴァンキッシュと対面した。
以下 新型ヴァンキッシュの諸元表である。
全長×全幅×全高 | 4,850×2,120×1,290mm |
車両重量 | 1,910kg |
エンジン型式 | AE31 |
最高出力 | 824PS |
最大トルク | 1000N・m |
エンジン種類 | 5.2Lツインターボチャージャー付き V12 |
総排気量 | 5,204cc |
トランスミッション | ZF製 8速AT |
新型ヴァンキッシュの第一印象として更に大きく長くなった印象であった。
それもその筈で2代目ヴァンキッシュの全長4,730mmに対して新型は4,850mmと120mm伸びており、初代ヴァンキッシュは4,665mmとなり約20cm近く全長が伸びている。
フロントボンネットを開けると、キャビン手前までにフロントミッドで5.2 LのV12 ツインターボエンジンが鎮座していた。
搭載されているV12 ツインターボエンジンは824PSの強力なパワーと1,000N・mのトルクを発生させる。
0~100km/hは3.3秒、最高速度は345km/hとアストンマーティンの量産車の中でも最高峰の加速と最高速になっている。
排気量は同じであるにも関わらずDBSアルティメットの759PSよりも60PS以上パフォーマンスが大幅に向上している点も見逃せない。
2024年に於いても新設計のV12エンジンを拝める事に歓喜し、新型ヴァンキッシュはフェンダー、ボンネット、ドア、ドライブシャフトなどがカーボンファイバーで生成されている。
セールスマネージャー曰く、フェンダーやドアをぶつけてしまった際はより高額な出費となり、基本的に修復は不可なのでアッセンブリ交換となってしまうとのこと。
フロントデザインでの最大の特徴はDB12やヴァンテージよりも巨大化したキドニーグリルとなる。
フロントボンネット中央が盛り上がり、ヘッドライト付近が大きく抉られているデザインはONE-77から取り入れたデザインだと私は強く感じ取った。
そして今までのアストンマーティンはV12モデルになるとボンネットダクトが左右合わせて4つ用意されていたが、新型ヴァンキッシュでは「ト」型のボンネットダクトが左右合わせて2つになっていたのも新たな発見であった。
ヘッドライトはヴァンテージに取り付けている物と同じに見え私には見分けが付かなかった。
ヴァンキッシュではカーボンブレーキと21インチホイールが標準で装備され、タイヤはフロント275/35ZR21、リア325/30ZR21のピレリ P ZEROが取り付けられている。
サイドにはやや控えめなフェンダーダクトが準備され、フロントバンパー下部を通過した走行風がホイールハウスに侵入し圧力が上昇し、その圧力を抑えると同時にダウンフォースを獲得する。
カーボンファイバーで成型されたサイドステップ、ドアミラー、ルーフはオプションのカーボンパッケージとなっている。
新型ヴァンキッシュとDB12、ヴァンキッシュと大きく異なったのがリアデザインになる。
先に新型として登場した2台は先代のモデルのデザインをほぼそのまま継承しているが、ヴァンキッシュは一新されアストンマーティンの今後の指針となるようなリアデザインである。
リアデザインは「ヴァラー」や「ヴァリアント」と同じくカムテールを採用している。
カムテールを採用した事によって、空気力学的効力を最小化することができ、燃費や性能向上の恩恵を得られる。
テールライトは7つのLEDが連なっており、新型アストンマーティンのトレンドとなりそうではあるが、私個人としては「C」型テールライトが恋しい気持ちがある。
左右2本出しのスクエア型のマフラーはチタン製となっており、チタンは軽量化と耐食性(腐食や錆に対する耐性)に優れているが加工が難しく、溶接も困難だという。
それでもアストンマーティンはヴァンキッシュにチタン製マフラーを取り付ける事を可能とし、フラッグシップモデルに対しての情熱に感服する。
リアのディフューザーもカーボンファイバーで成型されているが、「ASTON MARTIN」とロゴが貼り付けてあるシールドもオプションとしてカーボンファイバーに変更されていた。
通常の場合はボディと同色のシールドが取り付けられるという。
インテリアに移ると、DB12と同様に洗練されたデザインでインフォメントシステムはメルセデス色は一切なく、エアコンや音量調整のスイッチは全て物理スイッチとなり非常に扱い易く押した感触も滑らかで引っ掛かりは一切無かった。
ヴァンキッシュに乗り込むと、DB12やヴァンテージ同様に本革の独特の匂いに包まれる。この匂いはフォルクスワーゲンの新車では一切感じることが出来ない高級車ならではの体験になる。
ヴァンキッシュのインテリアはアストンマーティンの高級感な世界観を視覚と嗅覚で感じ取れるものだとキャビンに乗り込んで感じ、コートダジュールブルー色の本革シートは私の身体を包み込み適切なシートポジションへと導いてくれる。
そしてヴァンキッシュのステアリング付近で新たに気づいた事があり、ワイパーレバーとウィンカーレバーの機能が組み合わさり左レバーのみとなっていた。
ヴァンキッシュに採用されているオーディオは、ダブル アンプを備えた 15 スピーカーの Bowers and Wilkinsステレオでその音質を確かめられなかったのが残念であった。
今回、日本国外に引き渡される前に新型ヴァンキッシュを見る事ができて何よりも良かった。これが最後のV12エンジンだとセールスマネージャーから伝えられたのは悲しいがアストンマーティンとしての血統は今後も受け継がれて欲しい。
近い将来全てのモデルをハイブリッドへ移行すると言うので純内燃機関の持つアストンマーティンを所有出来るのはあと僅かかも知れない…