Up!のエアコンが効かない…ガス漏れでエバポレーター・コンデンサー交換
毎日思うが、夏がまだまだ終わらない…
「ガソリンスタンドやショップでエアコンガスを入れても、すぐに効かなくなる」
真夏のある日、Tシャツがびしょ濡れの状態でお客様が来店された。
予約は入っていなかったので何事かと驚いたが、とりあえず飲み物を渡して問診に移らせてもらった。車両はフォルクスワーゲン Up!、2013年式のほぼ初期型だ。
ガスを補充してもすぐ冷えなくなる。しばらく駐車したあとにエンジンを掛けると、吹き出し口から異臭がする。
この2点が診断のヒントになった。結論から書くと、今回のUp!は漏れ箇所が1か所ではなく、エバポレーターとコンデンサーの両方から冷媒漏れの形跡が確認できた。最終的に両方を交換し、修理費用は約30万円近く掛かってしまった。
この記事では実際の診断の流れと分解作業、費用の内訳をそのまま公開する。あわせて、Up!で確認できている他のエアコン修理事例も後半で紹介したい。
エアコンガスを補充しても直ぐエアコンが効かなくなる
問診で確認できたのは次の2点だった。
- ガソリンスタンドやショップでエアコンガスを入れても、 すぐに無くなってしまう
- しばらく車を止めておいた後にエンジンを掛けると、 エアコンの吹き出し口から異臭がする
まずはエアコンゲージで圧力を測ってみる。低圧・高圧ともに0MPa。補充してから時間が経っていたとはいえ、これだけ抜けているとなると、どこかに漏れがあると考えるのが自然だった。
季節はちょうど連日の猛暑が続いていた頃で、エアコンの相談が最も増える時期でもある。人間もへばる気温の中、車のエアコンは高負荷で回り続ける。この時期に冷えない車で走るのは、正直かなり厳しい。
ガスを補充しても再び冷えなくなるなら「漏れ」を疑う
ここは今回の記事で一番伝えたい部分になる。
冷媒が減っている車に冷媒を補充すると、一時的には冷えるようになることがある。
ただし、どこかに漏れが存在している場合、その漏れ箇所を直さない限り冷媒はまた減っていく。補充しては冷えなくなり、また補充する。この繰り返しでは根本的に解決しない。
だから「エアコンが冷えない=とりあえずガス補充」ではなく、短期間で再び冷えなくなるなら漏れ診断が必要という順番で考えたい。
冷えない原因が必ず冷媒漏れというわけではない。コンプレッサーが作動していない、電装系に問題がある、冷却ファンが回っていないなど、原因は他にもある。今回のUp!の場合は「補充してもすぐ無くなる」という経過があったため、漏れを疑って診断を進めた。
エンジンルームで私が順に確認していくのは、だいたい次の箇所になる。
- コンデンサー
- エアコンガス低圧・高圧チャックの緩み
- エキスパンションバルブ接合部
- コンプレッサー軸部
- ハイプレッシャーセンダー
冷媒回路の中にはコンプレッサーオイルが入っているため、漏れがある箇所にはオイルが一緒に染み出して、汚れとして残ることがある。それを手掛かりに絞り込んでいく。
先ずはコンデンサーだが、ここで怪しい箇所を発見した。
ただしUp!の場合はバンパーを外さないと全貌が分からないため、「漏れていなかった場合でもバンパー脱着の工賃が掛かる」ことをお客様へ先に報告している。
低圧・高圧のチャックはトルクが十分に掛かっていて異常なし。エキスパンションバルブの接合部には汚れがあったものの、冷媒由来のものではなかった。コンプレッサー軸部、ハイプレッシャーセンダーも異常なし。エンジンルーム内で漏れが疑われる箇所は、コンデンサーということになった。
今回のUp!はエバポレーターとコンデンサーの両方から漏れを確認
次は、エンジン始動時に異臭がするという件を診断していく。
まず冷媒を補充し、3時間ほど車両を放置した。その後エンジンを掛けると異臭を確認できた。冷媒に近い匂いだ。
漏れては補充し、また漏れて補充と繰り返してきた車両なので、エアコンフィルターに匂いが染み付いているのではないかと予想した。フィルターを外して匂いを嗅いでみる。
エアコンガスのような臭いが確認できた。ここまでの経過を合わせて、エバポレーター側からも冷媒が漏れていると判断した。
異臭=エバポレーターの冷媒漏れ、ではない。 エアコンの臭いは、エバポレーター表面の汚れ、カビや微生物、エアコンフィルターの汚れ、排水経路、外気由来など、さまざまな理由で発生する。 今回はガス補充直後の症状再現と、圧力・目視点検の結果を合わせて判断したもので、臭いだけで冷媒漏れと決めつけたわけではない。
正直に書いておくと、このとき店にはガス漏れ探知機が無かった。
新人君が落として壊してしまっていたためだ。通常なら、冷媒に蛍光剤を混ぜてUVライトで漏れ箇所を追跡する方法もあり、その方が確実に絞り込める。
コンデンサーについては、後述するバンパー脱着後の写真で汚れの状態を確認している。結果的に、この車両は室内側と車両前部の両方に漏れの形跡があったことになる。
「漏れは1か所」とは限らない。片方だけ直しても、もう片方から抜けていけば結局また冷えなくなる。お客様と料金を相談したうえで、エバポレーター交換とコンデンサー交換の両方を行うことになった。
カーエアコンはどうやって車内を冷やしている?
なぜエバポレーター交換でダッシュボードを外すことになるのか。ここを理解してもらうために、冷媒回路の役割を簡単に整理しておきたい。

ざっくり言えば、コンデンサーは車外側で熱を捨てる部品、エバポレーターは車内側で空気を冷やす部品となる。冷やされた空気をブロワファンが車内へ送り込むことで、吹き出し口から冷風が出る。
そしてエバポレーターは、ダッシュボードの奥にあるHVACケース(エアコンユニット)の内部に収まっている。ここが交換工賃を大きく左右する。
エバポレーター交換はダッシュボード脱着が必要
エバポレーターを交換するには、ダッシュボード周りをほぼ全て外すことになる。部品そのものは手のひらサイズなのに、そこへ辿り着くまでが本番だ。
Up!はマニュアルエアコンで、フラップの位置を手動で切り替えるスイッチモジュールがある。その先はワイヤーで繋がっているため、位置決めを必ずしておく。
ここがズレると、冷房の位置なのに暖房が出てくるというミスに繋がる。フルオートエアコンなら配線のみなので、この心配は無い。
ダッシュボードを下ろす際は、先ほどのスイッチモジュールのワイヤーを曲げないよう注意する。ステアリングコラムもフレームキャリアから外していく。
時間は測っていなかったが、ダッシュボードを下ろしてエアコンユニットまで辿り着くのに、だいたい3〜5時間掛かったと思う。
Up!はゴルフやパサートと違い、MOSTと呼ばれる光ファイバー通信やECUの数が少ない。そのぶん配線の束が圧倒的に細く、取り回しが少なくて済むのは救いだった。
ここで一つ気になる構造がある。フォルクスワーゲンは、エアコンユニットに取り付けられているドレーンホースの直下にエアバッグECUを取り付けている(ゴルフ、ポロでも確認済み)。
仮にドレーンホースがズレたり亀裂が入ったりして、除湿で発生した水を車外へ排出できなくなった場合、水の逃げ道は車内側しかない。エアバッグECUの直下で水滴が垂れ始め、結果としてECUがショートし、エアバッグ警告灯の点灯と車内の水浸しに繋がる。実例もあるので、ここは意識しておきたいポイントになる。
この位置に配置されている理由は、衝突事故時にエアバッグを正常作動させるため、ECUが壊れにくい中央へ置いているのだろうと私は考えている。ECUのアースポイントとしても良い場所なのだと思う。
基本的にトルクスで留まっていることが多いが、Up!は珍しくプラスネジでエアコンユニットが組み立てられていた。
取り外したエバポレーターは右上部が黒くなっており、冷媒が漏れた形跡があった。新品へ交換してエアコンユニットに組み付け、あとは取り外しと逆の手順で戻していく。
エバポレーターはダッシュボード奥のエアコンユニット内部にあり、簡単にアクセスできない。 ダッシュボード周辺の大規模な脱着とエアコンユニットの取り外しが必要で、そのうえ冷媒回路を開放するため、 回収・真空引き・充填まで一連の作業になる。 部品代よりも作業工程の多さが費用を押し上げる。 なお、作業手順は車種や仕様によって異なる。
Up!のコンデンサーを交換
続いてコンデンサーの交換になる。Up!の場合はバンパーを外すとコンデンサーへアクセスできるので、エバポレーターと比べれば比較的簡単だ。
バンパーを外してみると、バンパー下部が冷媒とオイルで汚れていた。この汚れ具合を見る限り、エバポレーターよりコンデンサー側の漏れの方が酷かった可能性がある。こちらも新品へ交換した。
部品を交換したら、真空引きを実施して冷媒を充填し、作業は終了となる。
この真空引きは、単に「冷媒を吸い出す作業」ではない。
冷媒回路を開放して部品を交換すると、回路の内部に空気や水分が入る。これを残したまま冷媒を入れると、冷えが悪くなるだけでなく、内部の部品にも良くない。真空引きは、その空気と水分を除去するための重要な工程になる。
また、真空状態がしっかり保持できるかどうかは、漏れの有無を確認する材料の一つにもなる。ただし、真空保持できたからといって絶対に漏れが無いと断定できるわけではない。ごく小さな漏れは、圧力が掛かった状態で初めて出てくることもある。
エバポレーター&コンデンサー交換工賃
| VW up! エアコン修理費用 VW UP! — AIR CONDITIONER REPAIR COST | ||
|---|---|---|
| 作業内容・使用部品 | 料金 | 部品番号 |
| エバポレーター交換工賃 | 65,000円 | — |
| エバポレーター | 116,600円 | 1S2 816 103 |
| エキスパンションバルブOリング | 2,024円 |
7H0 820 898 8E0 8E0 260 749 |
| コンデンサー交換工賃 | 11,000円 | — |
| コンデンサー | 83,600円 | 1S0 816 103 |
| コンデンサーOリング | 1,991円 |
4E0 260 749A 3D0 260 749C |
| エアコンフィルター | 6,930円 | 1S0 819 669 |
| エアコンガス缶3本 | サービス | — |
| 合計 | 287,145円 | — |
ご覧の通り、エバポレーター側だけで工賃と部品代を合わせて18万円を超えている。エアコンの修理が「思ったより高い」と言われる理由が、この内訳を見ると分かってもらえると思う。
Up!でほかに確認できたエアコン修理事例
今回はエバポレーターとコンデンサーだったが、Up!のエアコントラブルはこれだけではない。他店の作業実績として公開されている修理事例を見ると、コンプレッサー関連の報告も確認できる。以下は各社が公開している作業内容を要約したものになる。
この事例で興味深いのは、コンプレッサーの作動を認識しないと電動ファンが作動しないケースがある
という点だ。ファンが回っていないからファンが壊れている、とは限らないということになる。
念のため書いておくが、これらは「Up!は必ずここが壊れる」「持病だ」という意味ではない。 メーカーが正式に公表しているものでもない。 あくまで実際に確認できた別の修理事例として読んでほしい。
また、フォルクスワーゲン車全体で見れば、冷媒圧力センサーや配管、Oリング、エキスパンションバルブ、電動ファン、コンプレッサーの制御系といった箇所が原因になる修理例もある。ただしこれは他車種での話であり、Up!に多いという意味ではない。参考程度に留めてほしい。
Up!のエアコンが効かないときに考えられる原因
症状ごとに、点検で疑っていく方向を整理しておく。
| 症状から考える点検の方向(故障箇所を確定する表ではありません) | |
|---|---|
| 症状 | 疑うポイント |
| 補充後しばらくは冷えるが、また効かなくなる | 冷媒漏れ。コンデンサー、エバポレーター、配管、Oリングなど |
| まったく冷えない | 冷媒不足、コンプレッサー、電装系、圧力センサーなど |
| エンジンルームから異音がして冷えない | コンプレッサー周辺 |
| 停車時だけ冷えにくい | 冷却ファン、冷媒圧力、コンデンサーの放熱状態など |
| 冷えるまで非常に時間が掛かる | 冷媒量、コンプレッサーの能力、エキスパンションバルブなど |
(故障箇所を確定する表ではありません)
※症状だけで故障箇所を断定することはできません。実際には圧力測定や作動確認を含めた診断が必要です。
エアコン故障でよくある勘違い
漏れが無く、単純に冷媒が不足しているだけなら補充で改善することもある。ただし短期間で再び減るなら、どこかから漏れている。漏れている車に補充を繰り返しても、費用が積み重なるだけで根本的な解決にはならない。市販の缶で自分で入れれば直る、という話でもない。冷媒量や圧力を確認せずに闇雲に追加するのは避けてほしい。
コンプレッサーが原因のケースは確かに多い。ただ今回のUp!のように、コンプレッサー自体は正常で漏れが原因だったケースもある。逆に、電動ファンが回っていないように見えて実はコンプレッサー側の問題だった、という事例も確認できる。見た目の症状と原因が一致しないことは珍しくない。
臭いの原因はエバポレーター表面の汚れやカビ、エアコンフィルター、排水経路など多岐にわたる。今回のUp!でたまたま異臭と冷媒漏れが同時に存在していただけで、臭いが出たら冷媒漏れというわけではない。
真空保持の確認は有効な手段の一つだが、これだけで漏れの有無を断定するのは難しい。実際の診断では、圧力測定、目視、オイル汚れの確認、必要に応じて蛍光剤とUVライトによる追跡などを組み合わせていく。
コンデンサーは飛び石や下回りの接触でも損傷する
コンデンサーからの漏れは、経年劣化だけが原因ではない。過去に当店で確認した事例を挙げておく。
- コンデンサーは走行風が当たるようバンパーダクトから露出しているため、 大きい石が飛んできて損傷したケース
- 縁石や車止めにバンパー下部をぶつけてしまい、 ラジエーターとコンデンサーが共に割れてしまったケース
- 中古品を取り付けたのち、 新しい冷媒が入った状態でガス経路に問題が発生したケース
いずれも実際にあった事例になる。コンデンサーは車両の最前部にあるため、走行環境の影響を受けやすい部品だという点は覚えておいて損はない。
ここまで読んでもらえば分かる通り、カーエアコンの修理はまとまった費用になりやすい。特に次の条件が重なると金額が伸びる。
- エバポレーター交換が必要(ダッシュボード脱着を伴う)
- 漏れ箇所が複数ある
- コンプレッサーなど別の部品にも不具合がある
- 部品自体の価格が高い
今回のUp!はエバポレーターとコンデンサーの両方だったため、287,145円という金額になった。もしコンデンサーだけであれば、この金額にはならない。逆に、放置して冷媒が完全に抜けた状態で走り続けると、コンプレッサー側まで傷めて修理範囲が広がる可能性もある。冷えがおかしいと感じたら、早めに点検を受けてほしい。
よくある質問(F&Q)
Up!のエアコンガスを補充してもすぐ効かなくなるのはなぜ?
Up!のエアコン修理はいくら掛かる?
エバポレーター交換はなぜ高い?
コンデンサーだけなら安い?
コンプレッサーが壊れることもある?
ガスだけ補充して乗ってもいい?
エアコンの異臭とガス漏れは関係ある?
中古のUp!を買うとき、エアコンはどう確認する?
まとめ
- 補充してもすぐ冷えなくなるなら、 まず冷媒漏れを疑う
- 今回のUp!は エバポレーターとコンデンサーの両方に漏れの形跡 があった
- 漏れ箇所は1か所とは限らない
- エバポレーター交換はダッシュボード脱着を伴うため 工賃が高くなりやすい
- コンデンサーはUp!の場合 バンパーと左ヘッドライトの脱着で交換できた
- 今回の修理費用は 合計287,145円 (この事例での金額)
- Up!ではコンプレッサー関連の修理例も確認できる。 症状だけで原因は断定できない
エアコンの不調は、真夏だと本当に死活問題になる。今回のお客様も、汗だくで駆け込んできたくらいだ。冷えがおかしいと感じたら、ガスを継ぎ足しながら乗り続けるのではなく、一度きちんと診断を受けてほしい。この記事が、同じ症状で悩んでいるUp!オーナーの参考になれば嬉しい。

