今までずっと行きたかったジーライオンミュージアムへ…お目当てのロールス・ロイスに迫る。
まだ肌寒さが残る3月下旬頃、出張で大阪へ行く機会があった。
久しぶりに関西への2泊3日の出張となったが用事をささっと終わらせ、目的の「ジーライオンミュージアム」へ向かった。
ジーライオンミュージアムはその名の通りジーライオングループが運営しているクラシックカーミュージアムであり、動態保存にこだわっているという。
このジーライオンミュージアムで最も特徴的なのが100年以上の歴史を積み重ね、近代化遺産として価値の高い築港赤レンガ倉庫に数多くの希少価値の高いクラシックカーを世界各地から集結させている。
ジーライオンミュージアムに行きたかった理由として、私はどうしてもこの車を一度ゆっくり見に行きたかった。
それが、
「1947 Rolls-Royce Silver Wraith」
であった。
と、その他にも希少車が数多く展示されていたので紹介していきたい。
Alpine A110 1400
私がロールス・ロイスの他にもジーライオンミュージアムで見たいと思っていたのが、アルピーヌ A108の後継機であり、アルピーヌと名が出たら直ぐに思い付くのが1963年に誕生したA110である。
このアルピーヌをデザインしたと言われているのがジョヴァンニ・ミケロッティであり、彼の代表作として有名なのがヴィニャーレ在籍時に携わったフェラーリ250SクーペやBMW ノイエ・クラッセ、ミケロッティがヴィニャーレと盟友関係となり共同制作したスタンダード ヴァンガードが挙げられ、また日本車も手掛けている。
今となってはトラックの販売メーカーとなってしまったが、1960年代には日野 コンテッサというミケロッティがデザインしたモデルを販売していた。
そして私は日野 コンテッサ900スプリントのようなイタリアンスタイルの美しいデザインの車が現代でも買えるならば是非欲しいと思ってしまった。
(因みにコンテッサ 900スプリントは世界1台である)
話が逸れてしまったが、
アルピーヌA110はそのミケロッティの作品の1台であり、アルピーヌブルーに塗装されたボディは何処から眺めていても美しい。
以下アルピーヌ A110 1400の諸元表である。
全長×全幅×全高 | 3,800×1,570mm×1,150mm |
車両重量 | 72kg |
エンジン型式 | 不明 |
最高出力 | 120PS |
最大トルク | —N・m |
エンジン種類 | 直列4気筒OHV |
総排気量 | 1,390㏄ |
トランスミッション | 5速 MT |
アルピーヌ A110はエンジンのバリエーションが非常に多くどの原動機が積まれているのか私の乏しい知識では直ぐに判断出来ないが、ジーライオミュージアムに展示されているA110 1400はアイアンバンパーの形状が変更されており、バンパーの一部へとウィンカーの位置が変更されている。
1968年代のA110はルノー・8をベースとされており、1967年頃から大幅な構造変更があった。
変更前はエンジンやトランスミッション、ラジエーターといった重要な構成部品は全てリアに収められていたが冷却効率を高める為にラジエーターをフロント移動させ、サスペンションは2本、ブレーキは4輪ディスクブレーキへと変更された。
諸元表を見ると車両重量が非常に軽い事が分かり、A110のフレームはスチール チューブ バックボーン シャーシを採用しFRP製ののボディで構成されている。なのでパワーウェイトレシオは約5kg/hpでありスバル インプレッサ WRX STI A-Line Type Sや ホンダ NSX Type Tと肩を並べ、最高速度は200km/hを超えたという。
小型で軽量、リアエンジン、忠実なハンドリング、といえばポルシェが思い浮かぶのが大半でだと思うが、よりもっと小型で軽量でフランスらしいものとして描かれたA110をフロントから確認していく。
メタリックブルーに輝くボディは横に展示されていたビートルやDinoよりも存在感に溢れていた。
A110の最大の特徴となるのがフロント中央に備えたフォグライトであり後継機のA110にも継承されている。ヘッドライト、フォグライトはラリーカーを意識してかイエローバルブに交換されているのもオーナーの愛着心が伺える。
ジーライオンミュージアムに展示されているA110は初期モデルとは違いサイドのガーニッシュが無くなり走行風を多く取り込めるようになり、空力を意識しているのかウィンカーバルブはアイアンバンパーに内蔵されている。
サイドはフロントからリアまで滑らかな曲線を描いており、ルーフからリアエンドの美しいボディラインや大きく盛り上がったフロントホイールアーチが私はお気に入りである。
ジーライオンミュージアムではリアデザインを見る事が出来ないが、以前行ったオートモービルカウンシルで展示されていたA110で確認していきたい。
ほぼ同時期に発表されたジャガー Eタイプやポルシェ911(903)に近い美しいリアハッチデザインで巨大なリアガラスの湾曲に合わせてリアのシルエットが全体的半円に近い物になっている。
またエッジの効いたリアフェンダーも特徴的である。
A110はラリーレースで大きな功績を残した事で有名になった車であり、今までのアルピーヌに前例のない成功をもたらした。
WRCモンテカルロラリー(1971年と1973年)で2度の優勝を果たし、1973年のラリーシーズンも制覇した。この独占状態のA110を追い抜き、ラリーで勝利する事を目的と作られたランチア・ストラトスが必要だったという。
1947 Rolls-Royce Silver Wraith
アルピーヌを長い間眺めていたが、時間も迫ってきていたので残りの時間は最も楽しみにしていた1947年式 ロールス・ロイス シルバー レイスを堪能する事にした。
塗り分けは若干違うが、このファントムよりコンパクトでキュートな見た目のロールスロイスに見覚えがないだろうか??
私は良く覚えている。
「007 スペクター」にてブロフェルドのクレーター基地まで案内する為に、ボンドとマドレーヌを乗せたのがロールスロイス シルバー レイスになる。
1947年式のロールスロイス シルバー レイスは、伝統的な英国の豪華さと職人技が見事に調合された1台となっている。
ロールスロイスといえば優雅、洗練、技術的卓越性の象徴であり王族や著名人の多くが目的地まで快適に移動する為の方舟である。
しかし、その美しさは表面だけではなく、当時の技術を惜しみなく積み込んでいる。
ロールスロイスといえば、航空機エンジンのイメージもあり、現在では全日本空輸のANAはロールス・ロイスのエンジンを採用しているのも有名である。
第二次世界大戦の終結を告げる中、ロールス・ロイスは自社の岐路に立たされていることに気づいた。
当時は戦争支援のため、資源や物資をイギリスの航空エンジン工場に振り向けていたため、1940 年以来自動車を製造していなかった。
ロールス・ロイス内には自動車生産に戻る価値を見出せず将来的には航空エンジンこそが発展の糸口だと考える人も多かったという。
しかし上層部に自動車の未来に価値がある事を示すのに十分な功績を残したロールス・ロイスの車両が数多くあった。
その功績もあったお陰で新型の生産計画が新たに加わった。
それこそがシルバー レイスであり、ロールス・ロイスの戦後デビューモデルとなり今では伝説となったクルー工場で製造された最初のモデルという栄誉を獲得した。
シルバー・レイスのボンネットの下には4 速MTと組み合わせた 4,257cc 直列 6 気筒エンジンを搭載している。
このエンジンは 126PSを発生し、最高速度は時速約145km/hに到達する。
今では当たり前だが油圧ブレーキシステムも装備されており、最適な制動力を確保出来る。
1951 年には 4566 cc に1954 年には再び 4887 ccへと排気量が増加した。
シルバー・レイスを購入したオーナーは工場からベアシャーシのみ提供されていたという。
つまりシャシーにエンジンやサスペンションが取り付けられただけの状態であり、
購入者はパークワード社、HJマリナー、ジェームス・ヤング、フーパー社など、いくつかの有名なコーチビルダーから選択することができたという。
シルバー・レイスはコーチビルダーからのみ入手可能な最後の量産モデルであるという概念から、このハンドメイドで作られたモデルこそ真のロールスロイスと呼ぶ人もいる。
フロントデザインを確認していく前に、
ジーライオンミュージアムに展示されているシルバー・レイスは最も地位が高い最高級グレードである事を先に伝えておきたい。
その理由の1つがロールス・ロイスの象徴であるスピリット・オブ・エクスタシーだ。
このオーナメントに注目して欲しい。
その他のグレードや現代のロールス・ロイスのスピリット・オブ・エクスタシーは女性がローブを纏い中腰になっているのに対し、シルバー・レイスには膝まづいているスピリット・オブ・エクスタシーが取り付けられている。
この姿勢になった要因として、
当時のスピリット・オブ・エクスタシーはほとんど上半身がヌードであり何かで覆われている状態では無かったという。
そのスピリット・オブ・エクスタシーを見たアラブの王侯貴族がヌードではないオーナメントを求めた事によって作られてはいるが、実際にジーライオンミュージアムにあるシルバー・レイスはイギリスの貴族ケント公の妻、プリンセスマリナが実際に所有していた車両であり、
身分の高い人物に敬意を現すためのデザインという話もあってその信憑性は高いと思われる。
フロントにはもう一つ他のグレードと違う箇所があり、ルーフ中央にライトが取り付けられている。
このライトはプリンセスマリナが乗車している際に点灯し位が無い者に対して敬礼させる役割を持っているとのこと。
またコーチビルダーによって仕立てられ豪華で華やかさを見事に演出しているれたフロント、リアホイールアーチの湾曲はスピリット・オブエクスタシーのローブが風で靡いているような華麗なデザインである。
黒のボディに赤色で塗り分けられているが、注目して欲しいのがフロントフェンダーからリアエンドにまで繋がっているコーチラインである。
コーチラインはロールスロイスを仕立てる作業で最も重要で現代では6m近い車体に一直線で4mmの均一な線で描かれているが、シルバー・レイスには湾曲したボディに合わせカーブしながら美しいラインが描かれ、ボディ赤色の淵が白色で囲ってある塗り分けも当時の塗装技術士の技術力に脱帽する。
シルバー・レイスは1940 年代後半のロールスロイスの究極のモデルとなっている事を証明しており、私は007という映画を通してクラシック ロールス・ロイスの世界に少し触れる事が出来たのが何よりも嬉しかった。
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出典:Cohort Pic(k) of the Day: BMW 1800 (Neue Klasse) – Curbside Classic
出典:1947 Rolls-Royce Silver Wraith Sedanca DeVille | (hymanltd.com)