フォルクスワーゲン ゴルフ8のバッテリー上がりに注意。純正品と社外品の違いや交換時期を解説

ゴルフ8のバッテリー交換はなぜ重要?
輸入車の維持には定期的なメンテナンス費用が欠かせない。
その中でも、バッテリーは車両の安定稼働に直結する重要な部品になる。
フォルクスワーゲンの公式では、バッテリの交換時期を「2年ごと」と推奨しているが、実際にはコストや使用状況を考慮して「3年ごと」の交換を提案するディーラーやプロショップも多く、私が勤務しているショップでも3年間の期間を推奨している。
ゴルフ8の純正バッテリーの価格
ゴルフ8の純正バッテリーは、工賃を含め6万円前後かかる。この高額なコストが、2年ごとの交換をためらう要因となる。
しかし、バッテリー交換を先延ばしにすると、車両の電気系統に負担がかかり、重大なトラブルを引き起こすリスクが高まる。
実際の価格は以下の通りである。
•交換工賃及び診断料等 11,000円
(バッテリー上がり診断料8,000円を含む)
•バッテリー 54,000円 000915089AC
税込み価格合計 65,000円
特にゴルフ8 eTSIに搭載されているマイルドハイブリッドシステムは、12Vと48Vのバッテリーが連携して動作するためにバッテリーの状態によって車両への影響を受けやすい傾向にある。
ゴルフ8でのトラブル
先日、当ショップにレッカー搬送されてきたゴルフ8 eTSIの事例を紹介する。
お客さんから聴いた内容は以下の通りになる。
イオンモールで買い物後、
エンジンをかけた際にアシスト関係のエラーメッセージが表示された。
そのまま走行を続けていたら、48Vバッテリーの赤い警告灯が点灯し、路上でエンジンが停止。
ジャンピングスタートを試みたが、すぐにエンストしてしまい、結局レッカーを呼ぶことになってしまった。
マイルドハイブリッドを搭載したゴルフ8は今年ディーラーでの車検時にバッテリー交換を勧められていたものの、バッテリーの金額が高いので半年後に交換しようと考えていたが他にも出費が嵩んでしまいバッテリー交換を後回しにしていたことが分かった。
バッテリーの劣化とその影響
診断の結果、トラブルの原因は12Vバッテリーの劣化であった。
新品バッテリーに交換することで症状は改善したが、なぜ走行中にエンジンが停止したのかを紹介していく。
ゴルフ8 eTSIのマイルドハイブリッドシステムは、12Vバッテリーと48Vバッテリーが連携して車両の電気系統を支えている。
このシステムを採用するとメリットとして、
•燃費向上:100kmあたり最大0.4Lの燃料節約を実現。
•CO2削減:環境に配慮したゼロエミッション走行(コースティングモード)に対応
•電力管理:48Vシステムが車両のエネルギー需要に応じて電力を供給・貯蔵し、12Vシステムを補完。
が挙げられる。
バッテリーの劣化が進むと、内部電圧が低下し、12Vシステムが正常に機能しなくなる。
今回の事例では、以下のプロセスでトラブルが発生したと考えられる。
また実際に入庫した動画も撮影したので見ていただきたい。
ゴルフ8のエラープロセス
1. アシストシステムのエラー表示
12Vバッテリーの電圧低下により、車両コンピューターがアシストシステムの電力をカット。走行を優先するためエラーメッセージが表示。
2. 48Vバッテリーの放電
劣化した12Vバッテリーに48Vシステムが電力を供給し続けたせいで、48Vバッテリーが徐々に放電していき内部電圧が低下。
3. 完全放電によるエンジン停止
そしてコースティングモード作動中(走行中にエンジンが停止する機能)に12Vと48Vの両バッテリーが完全放電した結果、エンジン始動が困難になり走行不能に至った。
※コースティングモードは車両設定でOFFに出来ない。
また今回の例ではジャンピングスタートを試みたものの、短時間の充電では電圧が回復はしなかったとJAFのロードサービスから話を聴いた。
バッテリー上がり時の注意点
ゴルフ8 eTSIでバッテリー上がりが発生した場合、以下の手順を参考にしてほしい。
エンジン始動後の走行は控える
ジャンピングスタートでエンジンを始動させ走行が可能な状態になったとしても、コースティングモードが作動し再びエンジン停止からのエンジン始動の電圧が足りなくなり、走行不能に陥る可能性がある。
安全な場所に移動
エンジン始動後やイグニッションONの状態でシフトレバーを「N」にして、車両を安全な場所に移動させる。周囲の人に手伝ってもらい、押して移動させるのが最も安全である。
レッカー搬送を優先
コースティングモードをキャンセルできないため、ジャンピング後の走行は避け、レッカー搬送を依頼するのが最善となる。
ヘッドライトの校正が必要
バッテリー上がりが起きた際に厄介なのがダイナミックコーナリングエラーが表示され、IQヘッドライトの校正が必要になることだ。
このエラー表示が出た場合は正規ディーラーでの対応が必要になり、ヘッドライトの基本調整が必要で校正器は殆どの正規ディーラーに置いていない状況である。
正規ディーラーはメーカーから校正器をレンタルする必要があるので、そのレンタルに1ヶ月か2ヶ月は掛かってしまう。
なので今回は数ヶ月にヘッドライト校正を受ける前提として代替値を入力した。
IQヘッドライトの校正値を
左:109 右:-26(マイナス)
と入力し、ダイナミックコーナリングエラーは解消された。
純正バッテリーの重要性
純正バッテリーは、車両の電気系統に最適化されており、信頼性が高い。
社外品を使用する場合、コストは抑えられるが、以下のリスクが伴う。
アダプテーションの必要性
アイドリングストップやマイルドハイブリッドシステム搭載車では、バッテリー交換後に生産コードとシリアルコードを入力し「アダプテーション」と呼ばれる車両コンピューターへの登録作業が必要となる。DIYで交換した場合、この作業が省略されると、車両が新しいバッテリーを正しく認識できず、充電不足や早期劣化のリスクが高まる。
DIYで社外品バッテリーを交換する場合は、交換後にディーラーや専門ショップでアダプテーション作業を依頼することを強くオススメする。
VCDMやコーディングキットをお持ちの方は、自己責任で対応可能であるが、専門知識が必要となる。
ゴルフ8.5や新型モデルにも影響
2024年に登場した「ゴルフ8.5 eTSI」や新型パサート、新型ティグアンにも同様のマイルドハイブリッドシステムが採用されている。
これらのモデルでも、2.5〜3年ごとの純正バッテリー交換を徹底することでトラブルを未然に防げる。
特に環境性能を重視したマイルドハイブリッド車では、バッテリーの状態が燃費や走行性能に直結するため、定期的な点検が重要となる。
バッテリー交換の作業手順
ゴルフ8 eTSIの場合
以下は、2022年式ゴルフ8 eTSIのバッテリー交換作業の概要となる。専門的な作業となるため、ディーラーや信頼できる整備ショップでの実施を推奨。
1. 各端子の取り外し:エンジンを停止し、キーをオフに。
安全のため、バッテリーに取り付けられているバッテリーコントロールECUのコネクタを外し10mmソケットでマイナス端子を最初に外してプラス端子も同様に外していく。
2. ブラケットの取り外し:10mmの固定ブラケットと13mmの固定ブラケットを外し、12Vバッテリーを取り外す。
3. 新バッテリーの取り付け:純正バッテリーを正しく設置し、プラス端子を先に接続しマイナス端子を取り付け、固定ブラケットを元に戻す。
4. アダプテーション作業:専用診断ツールを使用して、車両コンピューターに新バッテリーを登録。
5. 動作確認:エンジン始動、アシストシステム、警告灯の状態を確認。
注意:48Vシステムは高電圧のため、専門知識がない場合は絶対に触らないでいただきたい。
まとめ
フォルクスワーゲン ゴルフ8、特にeTSIモデルでは、バッテリーの定期的な交換と適切なメンテナンスが欠かせない。
純正バッテリーの高コストを理由に交換を先延ばしにすると、走行中のエンジン停止や高額な修理費用につながるリスクがあるので社外品を使用する場合は、アダプテーション作業を忘れずに行いディーラーやプロショップに相談していただきたい。
いつも有益な情報ありがとうございます。
やはりエンジン停止のないSモード走行が一番いいんですかね〜
hi様
こんにちは!コメントありがとうございます。
ゴルフ8も少しづつ不具合が出てきました、、、
1.0Lであれば私はSモードをオススメします!1.5Lの場合ですとややエンジンが引っ張り気味になるので、
普段乗りには適していないと思います!!
まさかコースティングモードによってこんなトラブルが発生するとは考えもしなかったです…