007スペクターで登場したジャガー C-X75とはどんなスーパーカーなのか??一度は市販化を実現しようとして儚く消えたがイアン・カラムにより再び姿を表すことに。
XJ220に続くスーパーカー
2010年を代表とするスーパーカーに名を馳せれるルックスとテクロノジーを持ちながらも雲散霧消してしまった悲劇のスーパーカーがC-X75になる。
ジャガー XJ13という車を知っているだろうか?
半世紀以上前の1960年代にV12エンジンを搭載するロードカーを開発する為に誕生した。
ジャガーで初めてV12 エンジンを搭載しミッドシップに配置したことでも有名である。クロード・ベイリーが開発したこのエンジンは、SU キャブレターを備えた 4 カム 5.0L V12 のプロトタイプがテスト用としてJaguar Mark X/420Gに取り付けられた。
XJ13 は 1965 年のルマン レースに間に合うように準備できるという話があったにもかかわらず、プロジェクトは実際には 1965 年 6 月 3 日、つまりレースの 2 週間前まで開始されずXJ13は1966年3月に完成した。
が、1966年にはル・マンの規定が変更されてしまった。
プロトタイプカーは3リッターエンジンに制限された。より大きなエンジンを搭載した車を走らせるために、メーカーは量産車として50台(後に25台に削減)を製造する必要があり、製造された唯一のXJ13には5リッターV12エンジンが搭載されていたため、資金不足とルール変更が重なり、1969 年にXJ13はレースに出場することは出来なかった。
結果的にXJ13は世界で1台のみ製作され、現在は英国自動車博物館に展示されている。
Jaguar C-X75 Concept
なのでXJ13は悲劇のジャガーともいえる過去があり、その歴史はC-X75にも引き継がれる形となってしまった。
ジャガーのデザイン責任者イアン・カラムが示唆したようにC-X75は、XJ13 からインスピレーションを得ている。
キャブフォワード(キャビンが車体に対して全体的に全身していること)のデザインはそのまま継承しD-typeやE-typeの美しい曲線美を随所に取りいれたという。
特に驚きだったのがC-X75のコンセプトにはマイクロタービンが採用されていたことだった。
C-X75 は、19 kWh のリチウムイオンバッテリーを搭載し、各車輪に 1 つずつ、合計 4 つの 195 馬力のYASA電気モーターに電力を供給する航続距離延長型ハイブリッドになる。
バッテリーはBladon Jets社製ディーゼル燃料で動くマイクロタービン2基によって再充電され、必要に応じて電気モーターに追加の電力を供給する。
以下ジャガー C-X75の諸元表となる。
全長×全幅×全高 | 4,646×2,040mm×1,160mm |
車両重量 | 1,700kg |
エンジン型式 | — |
最高出力 | 778PS(コンセプト) 850PS(プロトタイプ) |
最大トルク | 1600N・m |
エンジン種類 | マイクロタービンハイブリッド (コンセプト) 1.6L ツインチャージャー直列4気筒(プロトタイプ) |
総排気量 | —cc |
トランスミッション | ダイレクトドライブ (コンセプト) 7速AT (プロトタイプ) |
コンセプト段階でのC-X75は環境にも配慮され、EUテストサイクルでの CO2 排出量はわずか 28g/kmとなる。
プリウスとの計測方法は異なるがJC08モードでのプリウスの排出量が76g/kmということを踏まえると驚異的な数値で、0~100km/hは3.4秒、更に最高速度は330km/hに達しパフォーマンスに非常に優れている。
なお、電気走行距離は110kmとなり日産サクラの180kmよりやや劣る数値となる。
C-X75コンセプトはトップギアでも紹介されたのが印象的であった。
Jaguar C-X75 Prototype
2011年5月にジャガーはC-X75を2013年から2015年までの間、限定生産することを発表した。生産台数を250台の限定にし当初のディーゼル燃料のマイクロタービンは廃止されターボチャージャーとスーパーチャージャーの2機の過給機を1.6L 4気筒エンジンに、19kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し4輪にモーターを備えたプラグインハイブリッドに生まれ変わっている。
ラ・フェラーリやマクラーレン P1、ポルシェ918と並ぶ光景を想像していたが2012年にプロジェクトの計画が世界経済を理由に白紙となってしまったが、2015年に公開した007 スペクターに登場しDB10とのカーチェイスは私を含め多くのをファンを盛り上げてくれた。
そして、10数年の時を経て2024年の10月30日にイアン・カラムによって再び姿を現した。
Jaguar C-X75 CALLUM
C-X75はスペクター用に5台のスタントカーを製作した内、4台が残ったという。
既に1台は専門エンジニアによってイギリスの公道を走れる許可を取得しているが、それに続く2台目が誕生した。
プロジェクトを企てたCALLUMは、今回のC-X75は真の特注品だと公表し公道走行はもちろんのことパフォーマンスや快適性、利便性を軸に開発したという。
ヘッドライトのデザインが変わっていることに直ぐに気づくが、外観はプロトタイプと大きく異なることは無く世界から高評価を得ているエクステリアデザインを継承している。
ウィローグリーンと呼ばれるボディカラーはジャガーのブリティッシュレーシンググリーンよりも更に明るく優しい色合いで柳の繊細な葉の柔らかく落ち着いた色合いにインスピレーションを得ているとのこと。
コンセプトモデルとは違いウインドウモールがアルミニウム仕上げでラグジュアリーな雰囲気を演出している。
大きく変わったのがインテリアだ。
コンセプトモデルでは後々のFタイプに発展するインテリアデザインで、今回のC-X75ではスタイリッシュに纏められている。
センターコンソールには「アローヘッドネックレス」 と呼ばれる3連のタッチ式のデジタルインフォディスプレイがありボタン式のギヤセレクター、パーキングレバーと思われるスイッチが採用されている。
ダッシュパネルはデジタルメーターではなくアナログ式となっており、コンセプトモデルのデジタルメーターとは違いXJ13、Dタイプ、Eタイプを彷彿させるデザインになる。
インテリアカラーはダークグリーンとクリームカラーの使い分けにセンスを感じ、ロードカーとしてのC-X75らしさを受け取ることができる。
皆さんも好きだとは思うがC-X75で最も好きなのがリアデザインになる。
無駄な要素がなく洗練され、ボディと一体化しているテールライトは芸術品とも呼べる。
巨大なリアディフューザーはアンダーフロアの気流を後方に流す大きな役割を勤め格納式のリアウイングも装備されている。
エンジンフードの下にはスペクターのスタントカーと同様にスーパーチャージャー付き5.0L V8エンジンを積んでいる。
最高出力は860PS、トルクは1,085N・mで最高速度は300km/h以上になると思われる。
完成するのに1,000時間以上も費やしたジャガー C-X75は日本では見る機会は無いが、映画でも活躍したその姿を再び現代に誕生させてイアン・カラムとそのチームの活動に今後も期待せずにはいられない。
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出典:2015 Jaguar C-X75 ‘Spectre’ | Abu Dhabi | RM Sotheby’s (rmsothebys.com)
出典:The Jaguar XJ220 At Caffeine & Machine — Tim Vaux