ジャガーFタイプを買って後悔したのか?2,000km走ったオーナーの本音
2,000km走って見えてきたFタイプの素顔

納車してから2~3週間に1度のペースで乗っている。決して頻繁に乗っているわけではないが、その分1回1回の運転で気付くことが多く、この車の癖や良さは少しずつ分かってきた。
結論から先に書いておくと、ジャガーFタイプは万人受けする車では無い。実際に所有してみて感じた満足している部分、そして正直に物足りないと感じている部分まで、隠さず書いていく。Fタイプの購入を本気で検討している人にとって、判断材料になると嬉しく思う。
リアは完璧、ただフロントも全て好きとは言えない
言うまでもなくデザインは美しい。あれだけ低く、長く、引き締まったボディラインを描けるスポーツカーは、ジャガー タイプ00や最近話題となっているフェラーリ ルーチェやメルセデスベンツ AMG GTと比べてしまうと今や貴重な美しいデザイ ンである。
特にリア周りは非の打ち所が無い。斜め後ろから見た時の盛り上がったフェンダーライン、テールランプの繊細な造形、中央に配置されたセンターエキゾーストの佇まいまで、全てが計算され尽くしている。駐車した後についつい振り返って眺めてしまう。

ただ、フロント周りに関しては、何故か今だに本気で好きになれない部分がある。
ボディカラーのせいなのか、グリルのデザインなのかは自分でも分からない。
心の底から好きと言い切れない、微妙な引っかかりが残っている。
そもそも自分が飽き性なだけかとも最近は思っているが、これは正直な感覚として書いておく。
納車したばかりなので、当分乗り換えるつもりは無いが、ただデザインに完璧を求める人ほど、購入前に現車を様々な角度から、できれば違うカラーで比較確認することを強くおすすめしたい。
写真で見た印象と、実車を様々な光の下で見た印象は、思っている以上に違うものであった。
1時間運転すると腰に来る、これは正直に書いておく
Fタイプの足回りは固い。これは間違いない事実だ。
市街地や荒れた路面では、サスペンションの固さがそのまま腰に伝わってくる。1時間ほど運転を続けると、はっきりと腰痛を感じ始める。これは過去所有してきた中でも、DB9より硬く、グラントゥーリズモ は車高を落としていせいで同じように明らかに硬い。
長距離移動メインで考えている人には、Fタイプは正直に言って向かない。週末に短時間楽しむセカンドカーとして割り切れる人向けの車であると思っている。逆に言えば、その割り切りが出来る人にとっては、この硬さこそが峠での歓びに繋がるとも言える。
最初は感動、慣れると物足りなくなるマフラー音
納車直後はエンジンをかける度に「これだ、これがFタイプだ」と感動していた。V6の軽やかで高音が効いた排気音が車内に響き渡る瞬間は、脳内でドーパミンが分泌された。

しかし、慣れというのは恐ろしいもので、今では物足りなさを感じるようになってきた。
社外マフラーを装着したFタイプは素晴らしい音色を奏でてくれる、V6本来の咆哮を聴きたい、と思ってしまっている。
これに関しては年内にマフラー交換を計画中でFタイプ本来が持つV6エンジンの魅了を、もっとはっきり聴けるはずだ。施工が完了したら別記事で詳しくレビューしていく。
10年目でも快調、イギリス車神話は崩れつつある
ここはFタイプ購入を検討する人が、おそらく一番気にしているポイントだろう。
2,000km走った時点での不具合は、エアコンコンプレッサーの断続作動による効きの悪化のみである。
完全に壊れているわけでは無いが、稼働と停止を繰り返してしまい、エアコンが効きづらいという症状だった。

これ以外は、警告灯の点灯や電装系の不具合、クーラントワーニング、足回りの異音も、現時点では一切出ていない。アストンマーティンDB9というイギリス車は大変であったが、10年目のイギリス車としては正直拍子抜けするほど快調である。
欧州車を毎日見ている立場からすると、Fタイプのこの「壊れなさ」は、同年式の輸入車の中でもかなり優秀な部類に入る。ジャガー=故障しやすいというイメージは、もう過去のものになりつつあると感じている。
ウォーターポンプやスピードセンサー辺りの故障が出てきても不思議では無い年式・走行距離なのだが、毎回機嫌よく走ってくれる。何よりエンジンを始動する際の「スタート&ストップボタン」を押すのがビクビクしなくていいのが気楽で良い。
V12のスターター音は素晴らしいが、それとは引き換えに何処か故障してしまいそうな不安感が毎回あった。
Fタイプを所有してから、ジャガー = 故障しやすい、イギリス車 = 信頼性が低い、という固定概念が、自分の中で少しずつ崩れてきている。
もちろん、必ず故障しないとは言い切れない。
これからウォーターポンプやセンサー類の交換が必要になる可能性は十分にある。だが、想像していたほど怖い車では無いというのが、ここまでの正直な感想だ。国産スポーツカーに乗っている若い人達にも、選択肢として十分検討する価値があると感じている。
中古価格が安い。最安値420万円という最大の魅力
Fタイプの最大の魅力の一つが、中古市場での価格設定である。
少し前までは初期モデルが300万円台前半の個体も数台市場に出ていた。現在はやや上昇傾向にあるものの、それでも狙えるラインは420万円ほどで推移している。新車価格1,000万円超えのスーパーチャージャー付きスポーツカーが、この値段で手に入る現状は、冷静に考えれば衝撃的に安い。
ジャガーというブランドの希少性、ロングノーズショートデッキの美しさ、スーパーチャージャー付きV6サウンド、これらが420万円で手に入る。同じ価格帯のポルシェ・ボクスター(中古)やケイマンと比較した時、Fタイプを選ぶ強い理由がここにある。
ただし、ポルシェと比べリセールバリューについては期待しない方が良い。ジャガーは新車から急激に下落して、その後緩やかに底値で推移する傾向がある。「乗り潰す覚悟」で長く付き合いたい人にこそ向いている車である。
ZF8速ATの完成度
Fタイプに搭載されているZF製の8速ATは、想像以上に完成されたトランスミッションだった。
滑らかな発進、踏み込んだ時の素早い変速、トルコンとは思えないキレ。デュアルクラッチに匹敵するレスポンスを、トルコン特有の滑らかさを失わずに実現している。Fタイプの走りを根本で支えているのは、間違いなくこのZF8速ATである。
過去にZF製の6速AT搭載車として、グラントゥーリズモ (フェラーリ製4.7L V8) と、アストンマーティンDB9 (6.0L V12) を乗り継いできた。どちらも素晴らしいエンジンを積んだ車だったが、正直、ギヤ段がどうしても足りなかった。せめて7速、できれば8速は欲しいと、当時から強く感じていた。
その不満が、Fタイプの8速ATで完全に解消された。高速巡行時のエンジン回転数の落とし方、加速時のギヤの繋がり、減速時のシフトダウンの的確さ、全てが過去のZF6速の不満を解消している。
過去所有していたCクラスに搭載されていた初期型の9G-TRONIC(メルセデスベンツ内製)は、私の中では過去最悪のATだった。変速ショック、変速タイミング、減速時のギクシャク感、どれもストレスでしか無く、結果的にCクラス売却の決定打となったほどである。
つまり、変速機の良し悪しはその車の所有満足度に直結する。Fタイプの8速ATは、長距離も街乗りも峠も、全ての場面で運転を楽しくしてくれる、隠れた名作だと言える。
唯一気になっているのは減速時の僅かなシフトショック。これは7月の正規ディーラー定期点検で相談する予定なので、結果はまた別途レポートする。
大排気量車経験者から見ると、燃費が驚くほど優秀
燃費に関しては、大排気量車を乗り継いできた身からすると、Fタイプは驚くほど優秀だと感じている。
2,000km走行時点での実測値はこの通りである。
| 走行モード・条件 | 実燃費(km/L) |
|---|---|
| 平均値(混合走行) | 7〜10 km/L |
| ダイナミックモード(スポーツ走行) | 4〜6 km/L |
| ノーマルモード(高速巡行) | 10〜13 km/L |
| ノーマルモード(市街地) | 8〜11 km/L |
3.0Lスーパーチャージャー付きエンジンとしては、この数値は非常に優秀である。
参考までに、過去所有していたアストンマーティンDB9 (6.0L V12) は、市街地でも高速でも3~5km/Lだった。給油は週1回ペースで、満タンにすると10,000円を平気で超えていた。それと比べれば、Fタイプの燃費は本当にありがたい。
セカンドカーとして週末メインで乗る使い方であれば、月のガソリン代も現実的な範囲に収まる。これは購入後に意外と嬉しかったポイントだ。
ハンドリング。これだけでFタイプを選ぶ価値がある
個人的に、Fタイプ最大の魅力はここだと思っている。
峠や山道でステアリングを切った瞬間、車が思い通りに曲がってくれる。フロントが鼻先からスッと向きを変え、リアがきっちりと付いてくる。車重を感じさせない、ボディサイズを感じさせない、見事な一体感がある。
車幅は1,925mmとやや大きめのボディなのだが、運転している時にその大きさを感じさせない。ハンドルの切れ角に対して、ボディが素直に答えてくれる。これは数字や言葉では伝えづらい、実際に運転した者にしか分からない感覚だ。

過去にグラントゥーリズモ 、アストンマーティンDB9、Cクラスと乗り継いできたが、どれもFタイプのハンドリング性能には届かなかった。グラントゥーリズモ は車重が、DB9はノーズの長さと回頭性が、Cクラスは反応の鈍さが、それぞれ気になる場面があった。
Fタイプにはそれらの不満がほぼ無い。スポーツカーとしての基本性能の高さを、運転すれば運転するほど実感する。
乗り心地に不満があったとしても、ステアリングを握って峠に入った瞬間、それらの不満が一気に吹き飛ぶ。本当にそれだけの魅力がここにはある。
満足点と不満点を整理する
2,000km走った時点での評価をまとめると、こうなる。
| 満足している点 | 不満を感じる点 |
|---|---|
| リア周りのデザインの美しさ | フロント周りに何故か引っかかる |
| ハンドリング性能の高さ | 足回りが固く、1時間で腰に来る |
| ZF8速ATの完成度 | マフラー音に物足りなさを感じ始めた |
| 10年目とは思えない信頼性 | エアコンコンプレッサーの不調有り |
| 3.0Lスーパーチャージャーとしては優秀な燃費 | リセールバリューはあまり期待出来ない |
| 420万円から狙える中古価格 | 長距離移動には向かない |
不満点はあるが、いずれも「致命的」ではない。マフラーは交換すれば解決するし、足回りの固さは慣れと割り切りでカバー出来る。エアコンも整備で対応可能だ。
一方、満足点の方は、これからお金で解決出来ない、Fタイプという車そのものの本質的な魅力ばかりである。デザイン、ハンドリング、トランスミッション、信頼性、価格。この組み合わせをこの価格帯で揃えられる車は、現時点で他に思い当たらない。
Fタイプを買って後悔したのか?
結論から言うと、後悔は全くしていない。
強いていうならばイタリアンレーシングレッドのボディカラーが本当はインダスシルバーやアンモナイトグレーが良かった。
満足出来ない部分は確かにある。腰痛になる足回り、慣れてしまったマフラー音、フロントに感じる微妙な引っかかり。これらは正直に書いておく必要がある。
だがそれでも、駐車場に停めた後に振り返って車を眺めた瞬間、深夜の首都高でステアリングを切った瞬間、エンジン始動時の音が車内に響いた瞬間、「ああ、Fタイプを買って良かった」と素直に思える。
数字や効率では絶対に説明出来ない、所有することで分かるジャガーFタイプ車に私は惹かれている。
まとめ
ジャガーFタイプは、誰にでもおすすめ出来る車では無い。燃費を最重視する人、毎日の足として使いたい人、長距離移動が多い人、リセールバリューを気にする人、こういう人達には他にもっと合理的な選択肢がある。
だが、デザインに惚れた人、エンジン音と走りを楽しみたい人、人と被らないスポーツカーが欲しい人、そして「不便さも含めて愛せる」覚悟がある人にとって、Fタイプは本当に満足度の高い一台になると断言出来る。
中古車市場で420万円から狙える今、Fタイプは「最後の手の届くクラシカルなスポーツカー」とも言える存在だ。気になっているのであれば、現車を見て、試乗して、エンジン音を聴いてみることを強くおすすめしたい。

