僅か数年しか生産されなかった希少なアストンマーティンとは?過去の歴史を見つめてみる。
アルカディアからあっという間に1ヶ月が経った。
今年も残り2週間を切り年々1年を振り返るスピードが早くなったと思いつつ、アストンマーティンの希少量産モデルと言われる2台を紹介していきたい。
2年しか生産されなかったヴィラージュ
恐らく最も短命で終わったと思うのが、ヴィラージュである。
僅かしか生産されなかった為に中古車市場に流れてくるのもごく稀であり、一時期は2~3台は登録されていたが現在は登録台数1台となり選ぶに選べない状況である。
中古価格はうろ覚えだが、おおよそ850万円から1,000万円の間で購入する事ができアストンマーティンにしては比較的買いやすい希少モデルとなっている。
このヴィラージュはDB9の上位モデルではあるが、DBS の下位モデルとなり2010年代のアストンマーティンの中間モデルとなっていた。
しかしフラッグシップモデルであるDBSはもちろんのこと、この頃はDB9もまだ普通に走っていたのでヴィラージュの立ち位置は微妙な所だった。
勿論私はこのヴィラージュも魅力的なアストンマーティンであり、所有したい1台ではあるが、一般的にこの頃は同じ様な見た目のアストンが多くイマイチ立ち位置が分からくなってしまっていた。
アストンマーティンによれば、ヴィラージュはDB9の洗練されたグランドツーリング能力と後者の向上したパフォーマンスの一部を兼ね備えているという。
その結果が非常に優れた新しいGTカーであることは間違いないが、ヴィラージュは同様にVH プラットフォームに基づいて構築されており、ベースにした3台の良く似たクルマを用意することは顧客は逆に混乱してしまうと思われる。
また、ボンネットの下にはアストンマーティンの5.9リッターV12エンジンが搭載されている。
2012年式最終型のDB9は477ps/600N・m、DBSは517ps/570N・mに対して、ヴィラージュは中間の497psと 570N・m を発生させる。
トランスミッションはリアミッドマウントの 6 速オートマチック Touchtronic 2 が組み合わされている。またカーボンファイバー プロペラ シャフトを使用し、完璧な 50:50 の重量配分、つまり高級感とスポーツ性能の調和の取れたGTカーに仕上げられている。
以下ヴィラージュの諸元表である。
全長×全幅×全高 | 4,703×1,904×1,282m |
車両重量 | 1,785kg |
エンジン型式 | AM11 |
最高出力 | 497ps |
最大トルク | 570N・m |
エンジン種類 | 自然吸気 12気筒 |
総排気量 | 5,935cc |
トランスミッション | 6速AT Touchtronic2 |
エクステリアを確認していく。
ヴィラージュのエクステリアはDB9 や DBS とフェンダーパネルやバンパーを共有していないので、随所に変更点が見られる。
ボディパネルはアルミニウム、マグネシウム、及び複合材料で作られている。
軽量化をしてはいるが、車量は 1785kg とDB9の1,760kgより25kg増え、より重たくなっている。
ヴィラージュの大きな変更点といえるのがフロントデザインになる。
LEDポジションライト、LEDウインカー、キセノンヘッドライトが一新されフロント下部のATFクーラーに当たるダクトも大型化し、より冷却効率を高めている。
DB9よりも車幅が大きく、DB9の1,875mmを超え1,905mmとなり、道路での存在感が増している。
サイドはアストンマーティンの美しいボディラインがクラシックなスタイルの特徴を継承している。オプションになるが、20 インチ10 スポークホイールもDB9と比べより高級感が増している。
そしてヴィラージュで最も推したい所が、
標準でカーボンブレーキを採用していることだ。
アストンマーティンの鋳鉄ブレーキローターは恐ろしく効かないので、制動力やメンテナンス性に優れているカーボンブレーキが取り付けられているのは魅力的である。
(先代のDB9は車間距離を取っていないと本当に追突してしまいそうになる)
リアに移ると特にDB9と比べて大きく変更はないが、私はこのリアデザインが堪らなく好きだ。今となっては少し古く見えるが、アストンマーティンは年数が経てば経つほどにデザインの美しさが熟されていくので生涯飽きる事はないだろう。
角度の問題かも知れないが若干幅広になり、下部のディフューザーが変更されている。
インテリアも大きな変更はない。
が、しかしナビゲーションシステムが評判の悪いボルボ製のシステムが変更されているとのこと。
より車内の快適さを上げる為にヴィラージュには標準的な 700Wのサウンド システム又はオプションの 1000Wの Bang & Olufsen 13スピーカー サウンド システムがオプションで採用されているので、中古車を狙う際の判断材料として加えておきたい。
ヴィラージュは DB9 と DBS の間に位置するが、フランス語の意味で「回転、旋回、カーブを曲がる、カーブする」という意味のヴィラージュという言葉を考えると、ヴィラージュは、このアストンマーティンのモデルの中でエレガントかつパワフルでありながら、控えめなスポーツカーとなるように設計されており、その表現を正確に満たしていると言える。
最後にアストンマーティンファクトリーではヴィラージュをお客様へ引き渡しする形にするまで約 200 時間を要し、インテリアのビスポークレザーと高品質の表面の仕上げだけで約 70 時間を費やすという。
手縫いで仕上げられたレザーの接合部分は完璧で、アストンマーティンのブランドロゴを取り付けた車両を購入するという事は高額な買い物になるが、同時にそれに見合った価値をヴィラージュから得ることができると私は思う。
最小のアストンマーティン
このキュートな見た目のアストンマーティンはご存知だろうか??
もう10年前の車両となるのが、アストンマーティン シグネットというアストン初のコンパクトカーである。
この余りにも小さいコンパクトカーをアストンマーティンがシャシーから作り上げた訳ではなく、トヨタのIQをベースにアストン流に仕上げた車になる。
ベイビーアストンと呼ばれたヴァンテージより更にベイビー化したシグネットは、
ボディ、シャシー、サスペンション、エンジン、トランスミッションといった主要コンポーネントをすべてトヨタ IQと共有している。
それにも関わらず当時の価格はIQ現新車価格の3倍だったが、現在の中古車では5倍にまで跳ね上がる程にシグネットの価値が高まっている。
現時点で中古車サイトに3台登録されているが、最低でも712万円で最も高いと1,000万円オーバーである。
(新車価格の500万円にも驚くのだが、中古車価格が新車価格を上回る程に高騰し続けている。)
私が欲しいDB9より、1/3しかない気筒数で唯一の5ナンバーでもあるシグネットがここまで市場価値が上がるとは発表された当時は思いもしなかった。
(というより、人気がなく価格が暴落すると思っていた)
どのハイブランドモデルもMT(マニュアルトランスミッション)は高騰しがちだが、このシグネットにも6速MTモデルが存在し、市場に現れたら800万円以上の価格を叩き出すと思われる。
以下シグネットの諸元表となる。
全長×全幅×全高 | 3078×1680×1500m |
車両重量 | 990kg |
エンジン型式 | 1NR |
最高出力 | 97ps |
最大トルク | 125N・m |
エンジン種類 | 直列4気筒DOHC |
総排気量 | 1,329cc |
トランスミッション | 6速MT、フロアCVT |
シグネットの小さな 1.33 リッター 4 気筒エンジンは、CO2 排出量がわずか 120g/kmとなり、これはアストンマーティンの代名詞と言われるV12 モデルはCO2排出量が350g/km 以上であり、V8ヴァンテージは295g/km数値となりシグネットとはまったく対照的である。
なので、シグネットには重要な役割があった。
環境性能(CAFE=企業平均燃費)に大きく貢献し、欧州連合の車両平均排出ガス基準に準拠する為にはシグネットの存在がアストンマーティンには必要不可欠だった。
アストンマーティンがシグネットを十分に販売できれば、ハイパフォーマンス車両を製造してもCO2 排出量で過度な制裁金を払わずに済み、高性能の V8 及びV12 エンジンを積んだアストンマーティンを製造し続けることができることを意味していた。
全長は僅か3メートル、アストン史上最小だ。
最もアストンで大きいラピード5,019mmと比べると約2mもの差がある。
シグネットはお金に余裕があり、都市部の少しの距離を移動するには丁度良い車両で燃費も悪くなく、ガソリンスタンドに向かう回数も減るので良い事尽くしである。
だか問題点もある。
0-100km/hに到達するには果てしない時間が必要だからだ。
普段乗り慣れているV12モデルのアストンと比べると、もちろんスポーツカーに位置付けされる訳もなく当時のその他のモデルと比べると加速に2倍以上の時間を要する。
CVTでは0~100kmが11.6秒と6速MTが11.8秒も多少の差はあるが基本的には遅く、馬力がヴィラージュと比べ400ps違うのも面白い。
しかし、旅行やお出掛けの時は日頃乗っているシグネットは休ませて、より獰猛なアストンを睡眠から起こしてあげれば良い事であり、何一つ気にする事はない。
エクステリアデザインをシグネットとIQを並べて確認していく。
最初はいつも通りフロントからだ。
ヘッドライトは形状は変わっていないが、内部のプロジェクターデザインが変更されている。
よりアストンらしさを引き出しているのが、
ボンネットに膨らみを持たせてヘッドライトの目頭辺りを窪ませることによってエッジを効かせ、IQより力強さと高級感を生み出している。
ボンネットにはエアベントが追加されているが、ボンネット裏にはインシュレーターが取り付けられているので冷却する為ではないと思われる。
フロントグリルは伝統のヴェーンドグリルが採用されており、アンダーグリルはフォグランプが取り付けられているがIQと同様の形状になる。
1/1サイズのチョロQと思わせるサイドは可愛さに溢れている。
タイヤは175/60 R16を履いており、フェンダーにはアストンモデルの象徴の1つであるフェンダーダクトも増設されている。
ドアはスワンドアとはならなかった為、通常の開き方となる。
リアはIQと比較するとインナーテールライトが増えているが、ネットで調べる限り点灯しないようだ。テールライトはDB9やヴィラージュは内側向きにアール形状となっているが、シグネットは外側に向かうアール形状のテールライトになる。
リアバンパーはIQと共用となっているが若干変更され、マフラーは片側1本出しになっている。
またシグネットはインテリアにてアストンの世界観を楽しむべきだ。
シグネットのエクステリアは確かにアストンマーティンなのだが、ドアを開けると、オーダーメイドのクラフトマンシップによるインテリアが視界に入ってくる。運転席に座るとアストンマーティンのロゴが付いている小さな車が本当にアストンマーティンによって作られた車だと感じる事ができる。
シグネットを購入する事が出来た顧客は、DB9やDBS、ヴァンテージといったモデルと同様のレザー、ステッチ、素材で自分の車を個性的に仕上げる事ができ、ボディペイントも用意された種類から選ぶのではなく完璧に自分好みに合わせることができた
シグネットはIQのプラスチックに覆われた内装とは違い、豪華なタンレザーで布張りされており、ルーフトリムやシート、ドアトリムはアルカンターラで処理され、すべて手作業でダブルステッチが施されている。
ピーラートリムにはメッキの鋲で留めてあるのがまたイギリスらしさを演出している。
私が特に気に入っているのがグローブボックスだ。普段目にしているグローブボックスの代わりに、レザーで仕上げられた一見バックの様な車検証入れが今までのアストンにはないデザインだからだ。
DB9に乗っていた時はウィンカーレバーやワイパーレバー、エアコンの吹き出し口の以外に樹脂感を全く感じなかったが、シグネットにも樹脂パーツの存在を殆ど感じない。
(ミラーアジャストやレベライザーはIQからの流用なので仕方ないが)
シグネットのインテリアは明らかに高級感に重点を置いている。一新したメーターパネル、本革巻きステアリングホイール、金属製インナードアハンドル、丁寧に磨かれた合金シフトレバーなど探せば探す程に細部はアストン独自に仕立てられた。
基本ベースはトヨタIQであり、車内空間は変わらないので大人4人で乗るのは難しいそうではあるが、奥さんや友人と2人でカフェにでも出掛ける時に、他のコンパクトカーより遥かに高級感あるシグネットで贅沢なドライブをしてみたいものだ。
こんばんは。
ヴィラージュは前期型のDB9にラピードのヘッドランプを移植した感じですよね。ヴィラージュが短命だったのは2013年モデルからDB9がヴィラージュと同じボディになってエンジンパワーも517馬力とかつてのDBSと同じパワーを得ることになったため存在価値がなくなったからでしょう。いわば後期型DB9のコンセプトモデルのような位置付けだったのではないかと思います。だから後ろのバッジを確認しない限りヴィラージュなのか私の友達が乗っている後期型のDB9なのか外見からは判別が難しいですね。でも後期型DB9より年式が古い分買いやすいかもしれないですね。私はさらにお求めやすい4枚ドアのラピードSを探します。ラピードSの難点はカーボンブレーキじゃないうえ、重量が2トンあるので、制動力に不安があることですが、今のクワトロポルテも同様に2トンのボディに鋳鉄ローターと4ポッドキャリパーで、そんなに飛ばさなければ止まらなくて困ることはないので、なんとかなるのかなと。
もんもんさん、こんにちは。
2010年モデルのDB9と比べて変更点が少ないので、フェンダーとヘッドライトを変えただけですよね。
最終型DB9もエンジンの出力を変更させただけだので、ヴィラージュとはほぼ見分けが付かないです笑
もんもんさんの仰る通り、リアエンブレムしか見分けが付かないと思います、、
ラピードS少し値落ちしてきてますよね??
運転した事はないのですが、実際のブレーキの効きは気になる所です。。
私も余裕があれば、DB9やDBSに手を出してみたいです…笑