ゴルフ7、ゴルフ トゥーランのメカトロニクスの高額修理が多発中。走行不能になる確率を下げる為に対策を実施しよう!!
やはりメカトロニクス…
ゴルフ7が販売されてから10年経とうとしているが、最近になって大きな故障が目立つようになってきた。
そしてフォルクスワーゲンの中でも切っても切れない縁であるメカトロニクスについての故障を今から紹介していきたい。
先ずこのメカトロニクスの役割であるが、ギヤボックス内のシフトフォークを動かしてギヤを締結している装置になる。
下記画像はメカトロニクスを外した状態となっているが、○で囲った箇所がシフトフォークであり、そこにメカトロニクスのピストンが挟まる形になる。
シフトフォークにピストンが挟まっている事でギヤアクチュエーター内の油圧の加減圧によってピストンに繋がっているシフトフォークが動いてギヤが入る仕組みになっている。
その油圧を生み出す機構を簡単に説明すると、乾式のメカトロニクス内にはギヤボックスとは違うオイルを使用しており、メカトロニクス内に密封されている。
その密封されているオイルをハイドロリックポンプモーターと機械式のハイドロリックポンプで油圧を発生させて、筒状の形をしているアキュムレーター内部には窒素ガスが封入されているのでハイドロリックポンプが発生させた油圧を調圧する役割を持っている。
過去3~4回に渡ってメカトロニクスのリコールが発表されたのが、このアキュムレーターを支えているハウジングが割れてしまい油圧を保持出来なくなってしまい走行不能になるという内容になっている。過去に一部の車両はアキュムレーター本体が緩んでいる状態の物もあった。
そしてレッカー搬送にて運ばれてきたゴルフ7の内容が、
「警告灯が多数点灯してギヤポジションが点滅して走行不能になった」
という状況であった。
実際の車両動画になるが、確かに警告灯が点灯してギヤポジションが点滅していた。
※因みにトゥーラン(5T)の場合はこのようにトランスミッションエラーが点灯する。
なのでリフトまで人力で押さなければいけなかったので、ギヤをNポジションにする必要があった。
ギヤをNポジションにするのは非常に簡単でシフトレバーカバーを外すと黄色のレバーのような部品があるのでそれを押しながらシフトレバーを下げるだけで完了となる。
※道路で止まってしまって道を塞いでしまい事故が起きそうな状況になった時のみ使用していただきたい。それ以外の場合はハザードを点灯し追突事故の恐れがあるので車両から離れていただきたい。
車両をリフトに乗せPポジションに戻したら、いよいよ診断に入っていく。
今回稀なケースであったのか、「トランスミッションエラー」が表示されていなかった。
故障コードは、
「P084000:ギヤボックスハイドロリックプレッシャーセンター1、回路の電気的故障」
「P172F00:ギヤアクチュエーターポジションセンサー1 電気的故障」
が入力されており、テストプランを進めていくとメカトロニクスの交換が必要と診断結果が出た。
メカトロニクス本体交換となった場合は約30万円くらいの金額になってしまう。
そしてフロントローターとパッドも交換時期となっているので更に5万円程追加整備が必要になるのでお客様に診断結果を話すにも頭を抱えてしまった。
お客様自身もゴルフ7を気に入っており大切に乗っているので、正直に話したところ交換の了承をしていただいた。
ひと安心したがミスの無いように注意を払いつつ交換作業を実施した。
作業手順として、
初めにメカトロニクスがギヤを締結したまま故障した場合はシフトフォークをNポジションにしなければならない。
ギヤポジションを全てNポジションへする事でメカトロニクスのピストンがシフトフォークの噛み合いがフリーになるので外し易くなる。
診断機にてメカトロニクスをNポジションにするモードがあるのだが、今回ECUが反応しなかった為に手動にてギヤをNポジションにする事にした。
手動でNポジションにする為には、ボンネットを開きバッテリー下部の黒い蓋を取り外す必要がある。
シフトレバーとワイヤーで繋がっているシフトレバーリンクには10mmのボルトで締め付けられているので取り外していく。
10mmのボルトを外した後はシフトレバーリンクがやや固着しているが、クリップクランプツール等を使用して外していく。
次に黒いカバーはT30のトルクスビスで固定されているので4本外していく。
外し終えたら下記の画像のようなロック機構があるので、指を中に入れて○で囲った部分を矢印の方向に力を入れてシフトフォークを動かしギヤを解除していく。
「カチャン」というギヤが抜けた音がしたら完了になる。
※既にNポジションになっている場合は矢印の方向に力を入れてもシフトフォークが固いまま動かないので、音がしなくても安心して欲しい。
メカトロニクスを外す準備が出来たので、アンダーカバーを外していく。メカトロニクスはトランスミッションに取り付けられている黒い箱型の部品になる。
トランスミッション下部のギヤオイルドレーンを外してギヤオイルを排出する。
次にフォルクスワーゲン純正の特殊工具を使ってレリーズレバーを押し戻し、ブーツに覆われているピストンをフリーにする。
ピストンをフリーの状態にしたらメカトロニクスが固定されている計7本のアルミボルトをT45トルクスソケットで取り外していく。
外し終えたらメカトロニクスの取り外しが可能になるが、外した際にギヤオイルが出てくるので注意しなければならない。
※アルミボルトは必ず新品を使用する必要がある。
取り外し終えたら、新品のメカトロニクスを取り付けていく。
メカトロニクスを取り付ける際はピストンがピストンチャンバーより25mm出ていないと取り付けの際にシフトフォークに噛み合わない為、4本全て25mmに合わていく。
シフトフォークを全てNポジション(中心)に合わせていく。
ギヤボックスへ取り付ける準備が整ったので、メカトロニクスをギヤボックスに取り付けてアルミボルトを10N•mでトルク締めしたらギヤボックスオイルを新品に交換し取り外しと逆の手順で組み付け作業は終了となる。
組み付け後は基本調整を実施した後にイモビライザーへのキー再登録が必要なのでスペアキー含めて登録して作業は終了となる。
そしてメカトロニクスが故障率を下げる対策であるが、ディーラーでのギヤボックスECUのアップデートをオススメする。
リコールでもギヤボックスECUのアップデートが発表されているが、対象車ではない車両もアップデートしてもらう事をオススメしている。
アップデートをする事でメカトロニクスを作動させるソフトウェアが最新になりよらメカトロニクスモジュールの負荷やクラッチの摩耗を抑える事が出来るからだ。
※必ずしもメカトロニクスの故障が無くなる訳ではなく、あくまでも予防であり故障が起きてしまう可能性もあるので注意して欲しい。
アップデートした事でソフトウェアが以下のように変化した。
旧:0CW 300 048K 0610
新:0CW 300 041N 1601
またゴルフやポロ(6Rや6C)でブレーキを離すと勝手に車が進もうとするクリープ現象が無くなっている車両、発進時に回転数だけ上がってギヤが繋がろうとしないハンチング現象が発生している場合はソフトウェアアップデートと基本調整で改善する事が出来るので是非ディーラーで作業依頼をしてみると良い。
※症状が治らない場合はクラッチの摩耗が考えられる
以下 メカトロニクス交換費用になる。
•メカトロニクス交換工賃 30,000円
•メカトロニクス 295,000円 0AM325025M Z2D
•アルミボルト4本 900円 WHT001922
•アルミボルト3本 700円 01X301127C
•オイルドレーンプラグ 1,500円 N 10037105
•トランスミッションオイル 4,500円 G 055512A2
税込み価格合計 332,600円
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