シャランの突然の「エンスト」には要注意。アイドリングストップから復帰しない時は燃料系に異常あり？

アイドリングストップからの…

3週間程前の話になるが、レッカーでシャランが運ばれてきた。

少し怖い話になるが、十字路で右折待ちをしていたところアイドリングストップでエンジンが止まり右折出来そうだったのでブレーキを離してエンジンが始動させようとしたが、エンジンが掛からず周囲から心無いクラクションの嵐を浴びせられたという。

再度スタートボタンを押しても「キュルキュル」と鳴るだけでエンジンは掛からず、そのまま十字路で身動きが出来なくパニックなってしまったと話をいただいた。

お客さんからは

お客さん

もうシャランに乗るのが怖い…しっかり直るまでは暫く乗りたくない。

と、その時に感じた恐怖が私にも伝わり、

何としてでも故障原因を突き止めなければと長期で預からせてもらっていた。

レッカーで運ばれてきた時は症状の再現性がなく通常通りエンジン始動が可能であった。

エンストするので何かヒントとなる故障コードがコンピューターに記録されているだろうと診断機を当ててみるも今回に限って1つも故障コードが入力されていなかった。

点火系統のスパークプラグやイグニッションコイルを確認したが問題はなかった。

タチバナ

過去イグニッションコイルの配線の被覆が剥がれ互いに触れ合いショートしエンストに繋がった症状があった!!

故障コードも入力されていないので電気的に繋がっている箇所には異常が無いのかと推測を立てるが、念の為に高圧フューエルポンプや低圧ポンプの燃圧を見ることにした。

高圧ポンプから見ていく。

先ずシャランの高圧ポンプは非常に内部摩耗し易くエンジン本体にダメージを与えてしまう。

なので車検時には燃圧をチェックする必要があるのだが、高圧ポンプの燃料圧の規定値(アイドリング時~高負荷時)50~150barとなっているので預かっているシャランのアイドリング値は58barと規定値との差は殆ど無かった。

高圧ポンプは問題ないとして、次は低圧のフューエルポンプを見ていく。

こちらも規定値が5.0~7.0barとなっていた。

診断機にて測定値を測ると6.2barとなっていたので問題は無さそうであったが、

過去トゥーランで故障コードが入力されずにエンストした車両があった。

その車両はフューエルポンプ不良で症状が改善したので今回も同様の症状とみてフューエルポンプの目視点検及び単体点検をすることにした。

シャラン フューエルポンプ交換

シャランのフューエルポンプ交換は他の車両と同じようなリアシート下からの交換は出来ない。

シャランのフューエルポンプはフューエルタンクの取り外しが必須なのでフューエルタンクを下ろしを実施していく。

先ずは給油口を取り外す必要があるので、Lピック等を用いて4箇所のロックを解除して取り外した。

左右のホイール、ホイールハウジングを取り外し運転席側では給油口を止めているボルトを外して反対側はチャコールキャニスターとの接続を解除した。

次にトレーリングアームに取り付いているスタビライザーリンクを取り外す。(ネジ山部が干渉してしまい非常に厄介)

フューエルフィルターの接続やヒーター回路のリンクも解除しフューエルタンクを下ろす準備をする。

フューエルタンクを固定されているボルトを外し、ミッションジャッキにてフューエルタンクを下ろしていく。

フューエルタンクを徐々に下ろしていくと、タンク上部にもリンクがあるので忘れずに取り外す。

フューエルタンクを問題なく下ろせたら後は簡単な作業になる。

フューエルポンプを外すには各パイプラインを外してコネクターを外していく。

そして今回のエンストの故障原因がここで判明した。

コネクターを外すとフューエルポンプの端子が錆びていた。この錆が原因で通電不良が発生しエンストしたと判断した。

車齢が10年近く経ち走行距離も8万kmも超えていたのでプラスチックが劣化し端子部に燃料が染み込み揮発を繰り返している間に錆びていき、何らかのタイミングで通電不良が起きエンジン始動不良が発生したと思われる。

なのでお客さんにエンストの原因を説明し、フューエルポンプ交換とフューエルポンプECUの見積もりを案内した後に了承を得たのでフューエルポンプ交換を実施した。

フューエルポンプの交換の写真を撮り忘れてしまったが、新品に交換後200kmの試乗を実施し問題なかったので車両を返却した。

以下2012年式 シャラン フューエルポンプ交換になる。

Yuu

整備士

InstagramYouTubeLINE

現在30歳の男性。フォルクスワーゲンのプロショップでフロントスタッフをしています。 アストンマーティンDB9、マセラティ グラントゥーリズモを所有していました。 現在はメルセデスベンツ Cクラスに乗っています。 いかに安く維持するか日々節約との勝負でその奮闘記やちょっとした整備や雑談を紹介したいと思っています。