エンジンを長期間かけずに放置するとエンジンが掛からなくなる?ゴルフ7/7.5でフューエルポンプが故障するケースとは?

長期間乗らない車はどうなる?
都心部に住む多くの方は、車を普段使いせず週末や休日のドライブでたまに使用するというケースが少なくない。

あるお客様のゴルフ7.5は、年間走行距離がわずか500km未満。6年以上経過してようやく走行距離が5,000kmに達した車両であったが、突然こんな連絡が入った。

バッテリーは上がっていないのに、エンジンがかからない…
エンジンがかからない!その原因とは?
お客様の話を聞くとJAFを呼んでジャンピングスタートを試みたものの、バッテリーには異常がなかったという。
バッテリーは当社で1年前に交換したばかりで日常的に充電も行っているため、バッテリー上がりの可能性は低いと私も考えていた。
なので車両をレッカー搬送してもらい、工場で故障診断を進めることにした。
搬送されたゴルフ7.5を確認すると、確かにスターターモーターは回るもののエンジンが始動しない状態であった。
一般的に気温の変動が大きい時期には空燃比の乱れやスパークプラグの湿りによる点火不良が原因でエンジンがかかりにくいことがあるが、今回はそれとは異なる症状であった。
以下の動画は、スターターモーターが回っているにもかかわらずエンジンが始動しない状態を撮影したものになる。
後部座席を取り外し、フューエルポンプの作動音を確認したところ、イグニッションON時に通常行われるプレランニング(始動性を高めるための短時間のポンプ作動)が全く聞こえなかった。
エンジン始動時もフューエルポンプが動いている気配がなく、ポンプの故障が疑われた。
診断機で故障コードを確認すると以下の故障コードが検出された。
•P307300:フューエルポンプコントロール アースにショート回路
•P308D00:フューエルポンプ低過ぎるスピード
フューエルポンプフューエルポンプの作動点検を行ったところ、信号電圧は正常に供給されているものの、ポンプ自体が全く作動しないことが判明。
配線やコネクターの接触不良も確認したが問題はなく、フューエルポンプ本体の故障と断定した。
そして今回走行距離が伸びていないにも関わらず何故フューエルポンプが故障してしまったのか私なりに考えてみた。
車両が長期間放置されると燃料タンク内の燃料が古くなり、ガソリンの添加剤が分解してベニヤやスラッジを形成することがある。
これらの汚れは、フューエルポンプやゴルフ7の世代からフューエルポンプと一体となったフューエルフィルターを詰まらせ、ポンプの動作を阻害すると考えた。
また燃料タンク内に水分が凝結し、燃料が汚染されることもあり、これがポンプの摩耗を早め汚染された燃料がポンプの早期故障を引き起こす可能性があると考えた。
フューエルポンプは燃料そのものが潤滑油の役割を果たしており、長期間使用しないとポンプ内部の燃料が蒸発または停滞し、モーターなどが十分に潤滑されない状態になる。
これによってポンプが再始動した際に異常な摩耗や故障が発生しやすくなる。
更に燃料が少ない状態で放置するとフューエルポンプ本体や燃料フィルターが乾燥し、劣化が進む恐れがある。
問診するとフューエルレベルはいつも少ないままで長時間乗らない状態が続いたという。
もしかしたら、フューエルポンプが完全に乾燥してしまいモーターの劣化が進んだと予測した。
なので長時間乗らない事が多い場合には、燃料は満タンにして1~2週間に1度はエンジンを始動し10分程度放置するだけでもフューエルポンプの劣化やバッテリーの劣化を防げることができる。
フューエルポンプ本体が原因と判断しお客様に見積もりを提示し、了承を得たので交換作業に進んだ。
ゴルフ7/7.5 フューエルポンプ交換
フォルクスワーゲンのフューエルポンプ交換は、シャランやトゥーランを除き、基本的な工具があればDIYでも可能な作業となる。
ただし自信がない場合は正規ディーラーやプロショップでの交換を強く推奨する。
以下に、DIYでの手順を紹介する。
必要工具
•プラスチックヘラ
•Lピック
•ウエス
交換手順
1. 燃料タンクが満タンの場合、燃料を溢す可能性があるので燃料を1/4程度まで減らしておく。
2. リアシートのISOFIXカバーを手前に引いて外す。

次にブラケットを下に押し込みながら手前に引いて計4箇所のロックを解除しシートを1度上に持ち上げてキャッチからシートを外し、やや強めに奥に押しながら持ち上げて外す。




3. シート下の黒いプラスチックカバーが見えるので、プラスチックヘラを使って慎重にツメを外す(ツメは破損しやすいため注意)。


4.2段式ロックのコネクターとフューエルパイプを解除。燃料が噴出する可能性があるため、周囲をウエスで保護する。

5.フューエルポンプ周りの砂や埃を水を切ったウエスやガラスクリーナで清掃し、マーカー等で印を付けて位置決めし、貫通ドライバーを使って金属ワッシャーを反時計回りに叩いて外す。


6. ポンプを慎重に持ち上げて取り外し、ゴミや異物がタンク内に入らないよう注意する。

7. 新しいフューエルポンプをゴムシールとともに取り付け、取り外しと逆の手順で組み立てる。

金属ワッシャーは位置決めした位置に合わせる。
8. 組み立て後、エンジンを始動。フューエルラインを外しているため、初回始動時はやや時間がかかる場合がある。
最後は燃料を満タンにし、漏れがないことを確認してシートを戻して作業は終了となる。
DIYでは約1~1.5時間、プロショップなら40分程度。
フューエルポンプ交換工賃
•交換工賃及び診断料等 8,000円
•フューエルポンプ 49,000円 5Q0919051CN
•Oリング 2,000円 1K0919133D
•コントロールユニット 36,000円 5Q0906093C
税込み価格合計 104,500円
よくある質問(FAQ)
問い合わせやコメント欄でいただく質問を先取りして回答していく
まとめ
ゴルフ7やゴルフ7.5で長期間放置していた車両でエンジンが掛からない場合はフューエルポンプの故障の可能性がある。
燃料の停滞によるベニヤやスラッジの形成、潤滑不足、燃料タンク内の水分による汚染が主な原因となり、特に燃料残量が少ない状態での長期間放置はポンプの劣化を加速させる。
今回のケースでは、走行距離がわずか5,000kmのゴルフ7.5でフューエルポンプの故障が確認され予防策として燃料は満タンに保ち、1~2週間に1度、10分程度エンジンを心掛けてほしい。
入庫のご案内は現在受け付けていませんが、エンジントラブルでお困りの方は気軽にお問い合わせフォーム又はコメント欄にメッセージを送ってください。