フォルクスワーゲンのショップで働いている私が ゴルフ8.5 のモデルに全て乗ってみた。eTSI、TDI、GTI、Rの魅力をそれぞれ解説する。

ゴルフ8.5の進化が凄い。マイナーチェンジを超えた本気のゴルフ!
2024年に登場したゴルフ8.5は、単なるフェイスリフトではなく大きくインフォメントシステムの進化を遂げたと私は今回の試乗で感じた。
マイルドハイブリッドのeTSI、クリーンディーゼルのTDI、伝統のホットハッチGTI、そして高性能AWDのR。

各モデルが個性を改めて感じ、インフォテインメントの劇的進化、洗練された走行性能、実用性の向上でフォルクスワーゲンの本気を感じる。
今回ショップでの試乗を基に、4モデルの魅力をエクステリア、インテリア、パワートレイン紹介していきたい。
ゴルフ8.5は小さくなった?
ゴルフ8.5は、フォルクスワーゲンのコンパクトカー哲学を体現している。ゴルフ8とは基本的な構造は変わっていないがゴルフ7から全長が約3cm延び、幅が1cm縮小し高さが0.4cm高くなりホイールベースはほぼ同等。
寸法に関しては見た目では殆ど変化したことが分からないが、コンパクトカーの取り回しやすさを維持しつつ空気抵抗係数のCd値は0.27前後としている。
またゴルフ8.5ではID.シリーズの近未来的デザインと実用性を融合し、以下のようにターゲットを狙っているように思える。
eTSI:日常使いかつエコ思考の向け
TDI:街中や出掛ける際の快適性重視
GTI:ホットハッチの楽しさを追求
R:パフォーマンス全振りのエンスージアスト
流線型ボディとIQ.LIGHT LEDヘッドライトが全モデル共通で、モダンかつ空力性能を強化。15インチタッチディスプレイやスポーツシートで、長距離ドライブも快適だ。
エクステリア
共通仕様
全長約4.28m、全幅1.79m、全高1.46mのコンパクトサイズ。Cd値0.27前後で空力性能を向上させ、静粛性と燃費をアップ。
スリムなLEDデイライトとグリルイルミネーションが新たにデザインされているが、夜間走行時にフロントグリルエンブレムが光るのは、何とも好みが分かれる仕様になっている。
•Active eTSI

シンプル化されたフロントバンパーに16インチのアルミホイールが装着されている。ベースモデルにも関わらずStyleとパワートレーンが同じであるが、リアがトーショーンビームなので乗り心地や走行面ではStyleには劣る。

ただしIQヘッドライトもオプションで取り付け可能でコスパ重視なモデルな印象

•R-Line TDI

18インチエアロホイール、GTIと基本デザインは同じだがグリルの形状がやや違うR-Line専用バンパーを装着している。
ドルフィングレーメタリックは私が気に入っているフォルクスワーゲンの純正ボディカラーの1つでスポーティデザインが映える。

全体的にデザインの完成度が高いが、リアマフラーが下向きでマフラーを突出させないデザインのリアバンパーはいただけない。
•GTI

R-Lineのバンパーにハニカムグリルを採用し、GTI伝統の赤いラインのアクセントとゴルフ5やゴルフ6で採用されていたホイールを現代風にリデザインし19インチホイールでより攻撃的に。

今後のパフォーマンスモデルでキャリパーが変更されると思うが、ベースのGTIではブレーキキャリパーはベースモデルと同様の形状をしていた。

ルノー メガーヌRSの真似をしたようなLEDフォグは他のモデルにはない仕様で非常にカッコ良い。
•R

GTIより硬派で先代のゴルフ8よりも更に落ち着いて、ゴルフ7とゴルフ8のデザインを融合させた印象だった。
R専用カラーであるラピスブルーがとても綺麗でRモデルを所有するなら間違いなくこのボディカラーを選ぶ。

20インチホイールにブレーキは2ポッドのドリルドローターが取り付けられGTIよりもブレーキ性能が大幅に向上している。
ブラックスタイルのモデルではハッチバックにはAkrapovičエキゾーストが取り付けられるのだが、ヴァリアントではオプションでもAkrapovičエキゾーストを付けられないのが残念だ。
インテリア
今回試乗した全モデルはDiscover Pro Max 15インチディスプレイを搭載していた。

Golf 8のナビの使いづらさを解消し、音声認識やタッチ感度が劇的に向上。Apple CarPlay/Android Autoのワイヤレス対応も魅力。
長年使いづらいと言われ続けていた純正ナビは大きく改善され、GoogleマップやナビタイムといったApple CarPlayで地図設定をする必要がないレベルでしっかりと目的地表示をしてくれるのでこの進化には感動した。

(ゴルフ8までのナビゲーションシステムは使い物にならないくらいに、目的地等の検索機能が酷い)
が、相変わらずエアコンスイッチは静電容量方式を採用しスライドやタッチで温度を変えられる仕組みになっている。

アイドリングストップのオフはディスプレイ上の押しやすい位置に変更されたがエンジン始動の度にリセットされるので不便さは変わっていなかった。

Rに限っては海外で集団訴訟を起こされた静電容量式ステアリングホイールが今だに取り付けられているので在庫処分かと思われる設定にがっかりした。


圧倒的に使いづらく不便であるこのステアリングはオプション設定にし、標準で物理スイッチに変えて欲しい。
パワートレイン
4モデルは用途に応じたパワートレインを採用。
•eTSI:1.5L TSI(150PS/110kW、250Nm)+48Vマイルドハイブリッド。燃費17.4km/L(WLTC)、0~100km/h 8.5秒。
•TDI:2.0L TDIディーゼル(150PS/110kW、360Nm)。燃費18.0km/L(WLTC)、0~100km/h 約8.5秒
•GTI:2.0L TSI(265PS/195kW、370Nm)。燃費14.5km/L(WLTC)、0~100km/h 5.9秒。
•R:2.0L TSI+4MOTION AWD(333PS/245kW、420Nm)。燃費13.0km/L(WLTC)、0~100km/h 4.6秒。
試乗インプレッション
eTSI
ゴルフ8より更に洗練され減速時のシフトショックがまだ僅かに感じられるが、以前と比べ大幅に軽減された。
発進は滑らかで、マイルドハイブリッドの電動アシストによりDSGのラグがないのがとても気持ちが良い。

低速トルクが厚く渋滞も快適。実走燃費は14~17km/Lが多く、日常使いに最適。
ステアリングは軽快でシャープ、コンフォートモードの乗り心地が良い。見た目はあまり良くないものの16インチホイールはゴルフとの愛車が良いと私は思っていて実際のロードテストではロードノイズも少なくブレーキの効き具合は申し分なかった。
中回転域のではターボチャージャーが効いてくる4000rpm以上で加速感ある。
エンジン音は静かで、急坂でも日常的に十分。
eTSIでは電動ブレーキシステムを採用しているせいか、ややブレーキペダルの感触に違和感を感じる。
実際の踏み込み量に対してのブレーキ効きに僅かな遅れがある為にゴルフ7から乗り換えた人は少し恐怖感や違和感を感じると思う。
またリアサスペンションがトーショーンビームというのもあってリアの挙動が気になり、乗り心地もマルチリンクと比べると悪い。

が、全体として効率と実用性の融合が魅力で、長距離のドライブでも優秀であった。
TDI
日本仕様のディーゼルは低速トルクが魅力的である。

発進時は360N•mの太いトルクのお陰でストレスフリーで走り出すことができ、坂道や高速合流でもディーゼル車のメリットを最大限に活かせる。

実燃費は18~21km/L前後で経済性高く、静粛性7ゴルフ7.5TDIよりも向上しているのでディーゼルノックと呼ばれる特有の振動音が抑えられている。

今回試乗したのはR-Line ヴァリアントで乗り心地はやや硬めな印象であった。
ドライビングプロファイルの「カスタム」でステアリングを「スポーツ」モードにするのがオススメ。
ステアリング操舵が機敏に反応し、ワインディングのトルクフル加速が楽しい。
ブレーキのタッチが自然でeTSIのような違和感は感じないところが更にディーゼルエンジンの魅力を引き立てる。
GTI
ゴルフ8からマニュアル設定が廃止されたので、ゴルフ7.5 GTIのMT車に乗っている人からは不評が多いが先代の2.0Lターボエンジンと比べて、トルクが中速域で発揮され、先代のGTIとは違った加速を感じた。

ただワイパーアーム付近に取り付けられているエンジンサウンドアクチュエータによる擬似的なエンジンサウンドがスピーカーから発せられる音がやや気になるが、キレの良いステアリングや新しいDCC Proのサスペンションによってコーナリングがとても気持ち良い印象。
実燃費は11~14km/L前後でシフトショック少ないが、悪路での乗り心地がバンプで衝撃を吸収しにくく、特にバンプストップに当たるような感覚があった。
排気音規制の影響でマフラー音はやや物足りなく、7.5GTIパフォーマンスや7.5GTI TCRの荒々しさは感じられなかった。
また最大トルクはゴルフ8GTIと同じだが、馬力が20PS向上しているのでアクセルをベタ踏みした時の 0~100km/h 5.9秒の加速感は楽しく、気持ち良く運転できた。
R
圧倒的なパワーで、AWDとトルクベクタリングにより雨天路面でも安定抜群。0~100km/h 4.6秒でシートに押し付けられる加速が強烈で、私のベースモデルのFタイプでは歯が立たないと直ぐに悟った。

エンジンのレスポンスは抜群で、ターボラグなく2000rpm以上でパワフルに吹け上がり、シフトアップ時のサウンドは擬似的であるが興奮を抑えきれない。
ヴァリアントには残念ながら設定は無いが、ハッチバックではオプションの「アクラポビッチ製エキゾーストシステム」を装着することをオススメする。車検非対応ではあるがダウンパイプを更に加えるとバブリングや音量アップにも繋がり1度は試してみたいものだ。
搭載されている7速デュアルクラッチトランスミッション(DSG)は素早い変速が特徴だが、低速域での発進時に「ややギクシャクする」との指摘があったが、私は全く気が付かなかった。

ゴルフ8Rでは稀に気になる挙動はあったが、もしかしたら8.5Rでは改善されているのかもしれない。
全輪駆動システム「4MOTION」は、前後トルク配分を100:0から50:50まで可変調整可能。さらに、R-パフォーマンストルクベクタリングが後輪の左右トルクを0~100%で制御し、コーナリング時の安定性と機敏性を両立。

他の試乗者のレビューでは、
「FFベースとは思えない、まるで純粋なスポーツカーのような挙動」
と絶賛されていた。
19インチホイールにPOTENZA S005 235/35 R19とDCCサスペンションで、コンフォートモードは街乗りや長距離で快適。


ただし、路面の凹凸や高速道路のジョイントで「やや硬め」の突き上げが気になる場合もあった。
レースモードはサーキット向けの硬さでロールを抑制している。
またハッチバックではオプションのサンルーフはベースやブラックスタイルでは取り付けられないが、レザーシートパッケージのAdvanceグレードのみ取り付けられるとのことで注意してほしい。
お金さえあれば間違いなくゴルフ8.5 Rの1択だ。
そう思える程に熟成されたゴルフの次期スポーツシリーズは今後ハイブリッドの可能性も出てきている。
純粋な内燃機関を持ったゴルフを新車で買えるのは、この8.5で最後かもしれない。
そして、最終的に維持費や車両価格のコストパフォーマンスを考えると TDIが最も推せるモデルだと私の中で結果が出た。
比較表:ゴルフ8.5 モデル別スペック
ゴルフ8.5 モデル別比較
まとめ
ゴルフ8.5は、日常使いのeTSI、エコとトルクのTDI、走りの楽しさのGTI、圧倒的パフォーマンスのRと、予算や用途に応じた選択肢を提供。
インフォテインメントの進化や日本仕様TDIの追加で、環境意識の高いユーザーにもオススメしたい。
試乗で感じた質感の向上は本物であるが、フォルクスワーゲンも年々値上がりが止まらないので狙うのであれば試乗車落ちのデモカーや認定中古車が狙い目である。
