実車で見たBHオークション東京2026。599 GTO 2億313万円!!私が注目した11台を紹介していく。
今回も注目のBHオークション

2026年6月20〜21日に開催されたBH AUCTION TOKYOに訪ねてきた。BH AUCTIONはこれで2回目になるが、今回のラインナップもなかなかに濃かった。

イタリアンV8とV12、後席を捨ててエンジンを積んだフレンチミッドシップ、ドイツの重厚なGT、サーキット直系のマクラーレン、さらにはイタリアが再構築したGT-R50まで。
出自も思想もバラバラなクルマが、一つの会場に並び落札結果も発表された。


会場での写真も多く撮ってきたので、歴史・エンジン・実車で見たデザインに加えて、発表された落札結果も合わせながら、特に気になった11台を1台ずつ振り返っていく。
2026年 6/20(土)プレビュー / 6/21(日)オークション開催
会場:シティサーキット東京ベイ(東京都江東区青海)/全60ロット
※開催は終了し、落札結果は主催者より発表済み(本記事に反映)。
私が注目した車種の早見表
細かい解説の前に、まず全体像から。気になる一台を見つけてから読み進めてもらうのが早いと思う。
| 車両 | ひとことでいう魅力 |
|---|---|
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Alfa Romeo 8C Competizione
Lot.56
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アルファの美意識を、そのまま立体にした現代の彫刻 |
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Ferrari 458 Speciale
Lot.47
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最後の自然吸気V8フェラーリが見せる、到達点の絶叫 |
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De Tomaso Pantera
Lot.48
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イタリアンデザイン×アメリカンV8の野性味 |
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ALPINA B3 GT3
Lot.36
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分かる人にだけ刺さる、ALPINAの隠し玉 |
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Ferrari 599 GTO
Lot.43
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V12フェラーリの狂気を公道に解き放った武闘派 |
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Ferrari 599 HGTE
Lot.34
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尖りすぎない、大人のためのV12 GT |
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Renault Sport Clio V6 Phase 2
Lot.41
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後席にV6を積んだ、フレンチホットハッチの狂気 |
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Mercedes-Benz 500SL
Lot.50
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佇まいと質感で勝つ、古き良きメルセデス |
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McLaren 570S GT4
Lot.55
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走らせるために作られた、純然たるレーシングマシン |
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McLaren 750S MCL38 Celebration Edition
Lot.58
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F1王者の記憶を刻んだ、現代マクラーレンの記念碑 |
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Nissan GT-R50 by Italdesign
Lot.59
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R35 GT-Rをイタリアが再構築した「別解」 |
スペック表や落札額を眺めているだけでは、どうしても伝わらない魅力がある。
馬力や成約価格の数字は、クルマの本当の差を半分も語ってくれない。
たとえば8Cの一筆書きのような曲線、458 Specialeの空力パーツが生む機能美、クリオV6の異様なリアフェンダー、GT-R50の美しいカーボンファイバー。
こうした造形の妙は、実車を前にすると一気に立ち上がってくる。
BHオークション会場の面白さは、まさにそこにある。これから競りに賭けられるクルマを、横から、斜め前から、そして細部まで、自分の目と足で角度を変えながら見られる。
普段はガラス越しやネットの写真でしか見られないクルマを、手の届く距離でじっくり観察できるのだ。価格の高い安いだけでなく、これだけ毛色の違うクルマのデザインを一度に見比べられること。
それこそが、BHオークションのいちばんの贅沢だと思う。
というわけで、ここからは撮ってきた写真を交えながら、各車のデザインを「どこを見ると面白いか」という視点で、落札結果も添えつつ紹介していく。

自然吸気エンジンの時代を感じる車
8C、458 Speciale、599 GTO、599 HGTE。
この4台に共通するのは、自然吸気エンジンの気持ちよさだ。今のターボやハイブリッドが劣っているわけではない。ただ、アクセルを踏んだ瞬間に音と回転がそのまま返ってくるあの感覚は、自然吸気でしか味わえない。電動化が進む今だからこそ、こうしたエンジンの価値はむしろ際立って見える。実際、この4台はいずれも今回しっかり成約しており、結果にもその人気が表れた。
Alfa Romeo 8C Competizione

「8C」は、ただのモデル名ではない。戦前、アルファロメオが直列8気筒(オットチリンドリ)を積んだ8C 2300や8C 2900でレースを席巻した、その栄光の称号だ。
2007年のこの8C Competizioneは、長く途絶えていた名跡を現代に呼び戻したフラッグシップであり、アルファにとっては「もう一度、夢を見せる」ための一台だった。世界500台のうち日本に割り当てられたのは70台とされる(出品情報による)。今のアルファのラインナップからは、なかなか出てこない種類のクルマだと思う。
積まれるのは、フェラーリ/マセラティと血を分けた4.7L V8、自然吸気。ただ、同じ血筋でもフェラーリのように研ぎ澄まされた刃のような音ではなく、色気のあるマセラティよりな鳴き方をする。低中速ではしっとりと、回していくと金属質な倍音が乗ってきて、最後は官能的に吠える。数字上のパワーよりも、この「鳴り方」そのものが8Cの魅力だ。
8Cの造形は、近づいて見るほど「金属でできた工業製品」というより「彫刻」にという文字が当てはまる。

フロントノーズは角がなく全体に丸みを帯び、ヘッドライト周りもどこか柔らかい。その優しい表情から一転、ボンネットは長く伸び、キャビンは後方へぐっと寄せられた、典型的なロングノーズ・ショートデッキ。


フロントフェンダーの頂点からドアを越え、リアフェンダーの張り出しまでが、まるで一筆書きのように途切れず流れていく。斜め前から見ると、この一本のラインと、盾型グリルを中心にした柔らかいフロントマスクが同時に目に入ってきて、思わず足が止まる。


現代のクルマでありながら、戦前や50年代のクラシックアルファが持っていた色気を、そのまま今の技術で再現したような佇まいだ。会場で実車を前にすると、速さのスペックより先に「これは美術品だ」という感覚が来る。

| Lot番号 | Lot.56 |
|---|---|
| 年式 | 2007年式 |
| 走行距離 | 2,182km(出品情報による) |
| 生産台数 | 世界500台/日本割当70台とされる |
| 予想落札価格 | ¥3,700万〜4,200万 |
| 落札結果 | 落札 ¥50,061,000(予想を上回る結果) |
| 見どころ | 日本割当70台のうちの1台で、走行も2千km台と少ない個体 |
Ferrari 458 Speciale

458イタリアは、私が最も好きなフェラーリでV8ミッドシップフェラーリの最高傑作だと思っている。そのベースの458イタリアから更に無駄を削り、空力を磨き、レスポンスを研ぎ澄ませたのがこのスペチアーレになる。
横滑り角を緻密に制御する専用の電子制御も与えられ、ノーマルとは別物のシャープさを手に入れた。そしてこの後、フェラーリのミッドシップV8は488でターボ化される。
結果として458 Specialeは、フェラーリの自然吸気V8という一つの時代に幕を引く存在になった。出品情報では生産1,308台のうちの1台とされ、走行はわずか1,916km、ほぼ未使用に近いコンディションだ。

4.5L自然吸気V8は、9,000rpm目前まで淀みなく一気に吹け上がり、その頂点で空気を切り裂くような高周波の金属音を放つ。ターボのように過給を待つ「間」がなく、踏んだ瞬間に回転と音が立ち上がる。この「回転がそのまま感情に直結する」感覚こそが、自然吸気が尊い理由だ。速さの数字ではなく、エンジンそのものが主役。

458スペチアーレのデザインは、「美しさ」より「機能から生まれた美」で見るクルマだ。ベースの458イタリアがすでに低く構えたミッドシップらしいプロポーションを持っているが、スペチアーレはそこに専用のフロントバンパーと大きなエアアウトレットが加わり、空気の通り道がそのまま顔つきになっている。ボンネットからルーフを越えてリアまで伸びるセンターストライプは、ただの飾りではなく、軽量・高性能モデルであることを一目で伝えるサインだ。

サイドから見ると、前後フェンダーの張り出しに対してキャビンが低く小さく、エンジンが主役と思わせる。

リアに回ると、複雑に造形されたディフューザーと、メカニカルでむき出しに近い処理が目に入る。ベースの458の流麗さに対して、スペチアーレは全身に緊張感が宿っている。会場で2台を並べて見比べられたら、この差は写真以上にはっきり分かるはずだ。


| Lot番号 | Lot.47 |
|---|---|
| 年式 | 2015年式 |
| 走行距離 | 1,916km(出品情報による) |
| 生産台数 | 出品情報では1,308台のうちの1台とされる |
| 予想落札価格 | ¥6,500万〜7,500万 |
| 落札結果 | 落札 ¥94,350,000(予想を上回る結果) |
| 見どころ | カーボン軽量ボディ+ほぼ未使用に近い低走行コンディション |
Ferrari 599 GTO

フェラーリにとって「GTO」は、むやみに与えられる名前ではない。250 GTO、288 GTO…歴史的な名車にだけ許された称号だ。
599 GTOは、その重い名を背負った一台で、ベースは599 GTBながら、中身はサーキット専用の実験車「599XX」で得た思想と技術を色濃く受け継いでいる。
当時の市販フェラーリとして最速級のラップを刻んだとも言われ、世界599台限定で作られた。出品個体は走行わずか331km、フェラーリ・クラシケ認定証付きという、ほぼ新車のような状態だ。
F140系の6.0L V12自然吸気は、670馬力前後を発生し、フロントに積まれているとは思えないほど鋭く、そして高らかに吹け上がる。重厚なフロントエンジンGTの余裕と、レーシングマシンのような咆哮を同時に併せ持つ、二面性のあるエンジンだ。
FRというオーソドックスな駆動方式で、ここまで攻撃的に仕上げてくるあたりに、フェラーリの本気を感じる。今となっては、この組み合わせ自体が贅沢だ。

599 GTOは、優雅なGTの姿に、戦闘的な空気をあとから注ぎ込んだようなデザインだ。
ベースの599 GTBが持つ長いボンネットと、後方に下がったキャビンは、フロントV12フェラーリならではの伸びやかなプロポーション。


横から見ると、エンジンを前に積んでいることが姿そのものから伝わってくる。そこにGTOでは、フロントの大きなエアアウトレットや引き締められたエアロが加わり、優雅さの中に明確な凶暴さが立ち上がる。

派手な大型ウイングで威圧するタイプではなく、佇まいと細部の処理で「ただのGTではない」と分からせる。斜め前から見たときの、長いノーズと低いキャビンのバランスは、まさにフロントV12の美点そのものだ。リアに回れば、ディフューザーやマフラーの処理に、戦闘機らしさが伺える。
| Lot番号 | Lot.43 |
|---|---|
| 年式 | 2010年式 |
| 走行距離 | 331km(出品情報による) |
| 限定台数 | 世界599台限定 |
| 証明書 | フェラーリ・クラシケ認定証付きとされる |
| 予想落札価格 | ¥1.25億〜1.30億 |
| 落札結果 | 落札 ¥203,130,000(予想を大きく上回る、今回の11台で最高額) |
| 見どころ | 走行331kmの極低走行+クラシケ認定という、状態と裏付けの強さ |
Ferrari 599 HGTE

599 HGTEは、599 GTBに「HGTE(Handling GTE)」パッケージを組み込んだ仕様だ。
サスペンションやホイール、エアロを見直し、GTBの走りを一段引き締めている。GTOがサーキット由来の戦闘機だとすれば、こちらはあくまで公道で楽しむことを前提にした、バランス型のV12フェラーリ。同じ599でも、狙っている世界がまったく違う。
フロントに積まれる6.0L V12は、HGTEでも自然吸気ならではの伸びやかさが健在。
GTOのような過激さはないが、その分、アクセルに素直に応える華やかさと余裕があるとのこと。高回転まで澄んだ音で回り切る一方、低回転では穏やかで、長距離も苦にしない懐の深さを持つ。攻めるためではなく、味わうためのV12だという。

HGTEのデザインは、GTOのような攻撃性とは逆方向。
ベースとなった599 GTBの優雅でロングノーズなシルエットを基本そのままに、専用ホイールと引き締められた足回りによって、全体がきりっと締まって見える。
派手なエアロや大きな開口部で凄みを出すのではなく、車高や足元の引き締まりという「立ち姿」の変化で違いを表現している。

だから一見すると通常の599と見分けにくいが、ホイールデザインや車全体のスタンスを見れば、HGTEらしい引き締まりがちゃんと伝わってくる。公道GTとしての品の良さを残したまま、走りへの本気度をさりげなく上乗せした、そんなバランスのデザインだ。
| Lot番号 | Lot.34 |
|---|---|
| 年式 | 2011年式 |
| 仕様 | 599 GTBのHGTE(Handling GTE)パッケージ装着車 |
| 予想落札価格 | ¥2,100万〜2,300万 |
| 落札結果 | 落札 ¥29,415,000(予想を上回る結果) |
| 見どころ | 3台のフェラーリの中では最も手が届きやすく、V12 GTの世界への入口になりうる立ち位置 |
今では作れない、自由な発想の車
パンテーラとクリオV6は、効率やマーケティングだけでは絶対に生まれないクルマだ。イタリアのボディにアメリカンV8を積み、コンパクトハッチの後席を潰してV6をミッドシップに置く。採算や常識をいったん脇に置いた、こういう無茶が形になっていた時代の面白さが、この2台には詰まっている。ちなみに、この個性的な2台はどちらも今回は不落。面白さと、買い手が一気につくかどうかは、また別の話なのかもしれない。
De Tomaso Pantera

パンテーラは、デ・トマソを代表するミッドシップスーパーカーだ。イタリアでデザイン・製造されたボディに、フォードの大排気量V8を積むという大胆な発想で生まれ、当時はアメリカでも数多く売られた。フェラーリやランボルギーニのような純血のイタリアンスーパーカーとは違い、ヨーロッパの美意識とアメリカの物量が混じり合った、いわば異文化ミックスの産物。この出自の独特さこそが、パンテーラという車の核心だ。

心臓はフォード製のV8。高回転まで精密に回るイタリアンV8とは対照的に、低回転から地を這うような図太いトルクで車体をぐいぐい押し出す。繊細さや高回転の伸びで魅せるのではなく、わかりやすい速さと、腹に響く荒々しいサウンドで勝負するエンジンだ。整いすぎていない、この粗さがいい。
パンテーラのデザインは、とにかく低く、鋭い。70年代スーパーカーらしい直線的なウェッジシェイプで、フロントは地面すれすれまで低く落ち込み、リトラクタブルライトを閉じた状態だと、のっぺりとした平面が逆に迫力を生む。
キャビンはぐっと絞り込まれ、その後ろにエンジンを収めたリアセクションが幅広く構える。現代のスーパーカーのように空力で隙なく整えられてはいないので、よく見るとパネルの面やバンパーの処理に、当時ものらしい大らかさ…言い換えれば「隙」がある。
だがその整いすぎていない感じこそ、イタリアンボディにアメリカンV8を積んだパンテーラの荒々しさにぴったりだ。レストアされすぎず当時の空気が残った個体なら、その味はさらに濃くなる。
| Lot番号 | Lot.48 |
|---|---|
| 年式 | 1973年式 |
| 予想落札価格 | ¥1,500万〜1,700万 |
| 落札結果 | 不落(UNSOLD)— 今回は成約に至らず |
| 見どころ | 70年代ミッドシップの空気をまとう個体(走行・コンディション等の詳細は出品情報で要確認) |
Renault Sport Clio V6 Phase2

普通に考えれば、コンパクトハッチのクリオは、前にエンジンを積んで後席に人を乗せるクルマだ。ところがこのクリオV6は、その後席をまるごと潰し、空いたスペースにV6エンジンをミッドシップ搭載してしまった。発想の元にあるのは、かつて街中を暴れ回ったルノー5ターボ。実用車をベースに非常識なスポーツカーを仕立てるという、ルノーの伝統芸の現代版だ。Phase2は初期型を熟成させ、扱いやすさと完成度を一段引き上げた改良版にあたる。
リアに積まれる3.0L V6は、見た目からは想像できないサウンドと加速を生む。実用ハッチの皮を被りながら、ドライバーの背後でエンジンが唸るという、構造からして完全にミッドシップスポーツ。速さの絶対値だけなら上はいくらでもいるが、この見た目と中身のギャップそのものが、何より面白い。
クリオV6のデザインは、普通のコンパクトハッチを無理やりワイドボディ化したような、見れば見るほど「異様」なものだ。

ベースのクリオのかわいい顔つきは残っているのに、ドアの後ろから一気にフェンダーが外へ張り出し、その下にはエンジン冷却のための大きなサイドインテークが口を開ける。ホイールベースは詰まっているのに全幅は広く、上から見れば前後に短く左右に太い、明らかに普通じゃないプロポーション。

真後ろから見ると、その異様なワイド感と、小さなボディに対して太いタイヤがどっしり構えるアンバランスさが際立つ。後席を潰してミッドにエンジンを積んだ、その構造がそのまま塊のある外観になっている。
| Lot番号 | Lot.41 |
|---|---|
| 年式 | 2004年式 |
| 仕様 | 完成度を高めた改良版「Phase 2」 |
| 予想落札価格 | ¥1,100万〜1,300万 |
| 落札結果 | 不落(UNSOLD)— 今回は成約に至らず |
| 見どころ | 初期型より熟成したPhase2という点(個体の詳細は出品情報で要確認) |
分かる人に刺さる、玄人向けの2台
派手なスーパーカーの隣で、知っている人だけが静かに反応するのがこの2台。ALPINA B3 GT3とMercedes-Benz 500SLだ。スペックや音で殴ってくるタイプではないが、仕立ての良さや時間の積み重ねという、まったく別の物差しで評価されるクルマである。派手な存在ではないが、今回はどちらも成約していた。
ALPINA B3 GT3

そもそもALPINAは、単なるBMWのチューナーではなく、独自の型式認証を持つ自動車メーカーだ。同じBMWベースでも、サーキットでのタイムを突き詰めるBMW Mとは思想が違う。ALPINAが重んじるのは、速さだけでなく、仕立ての良さ、上質な乗り味、そして長く付き合える完成度。このB3 GT3は、3シリーズをベースにしたB3の中でも、かなり走りに振った少数生産の特別仕様にあたる。
ベースとなるのはBMWの直列6気筒で、そこにALPINA流のチューニングが施されている。荒々しく主張するのではなく、滑らかに、それでいて確実に速い。
パワーを誇示するより、どんな場面でも上質に走り切ることを優先する。
この味付けの方向性こそ、ALPINAがBMW Mと決定的に違うところだ。
B3 GT3のデザインは、ひと目では特別さが分からない。ベースの3シリーズの落ち着いた姿に、ALPINA伝統のストライプと、専用デザインのホイールが加わる程度で、ボディキットも過度には主張しない。GT3では特別仕様として大型のリアウィングが取り付けられているが、BMW Mのように大きなエアロやブリスターフェンダーで凄みを出すのではなく、あくまで上品な範囲に留めているのがALPINA流。
だからこそ、近づいて細部を見たときに控えめなフロントスポイラーの形、ホイールの繊細なスポークデザイン、内装にシリアルプレートがあれば、それが「ただのBMWではない」何よりの証拠になる。派手に見せないのに、分かる人ほど欲しくなる。そういうデザインだ。
| Lot番号 | Lot.36 |
|---|---|
| 年式 | 2012年式 |
| ベース/構成 | BMW 3シリーズ+直6を、ALPINAが仕立てた特別仕様 |
| 限定台数 | 少数生産の特別仕様(詳細は出品情報・公表情報で要確認) |
| 予想落札価格 | ¥850万〜1,050万 |
| 落札結果 | 落札 ¥10,878,000(予想レンジ上限を上回る結果) |
| 見どころ | 今回の出品車の中では比較的手の届く価格帯。ALPINAの希少な特別仕様という点 |
Mercedes-Benz 500SL

R107型SLは、1971年から1989年まで実に18年もの長きにわたって作られた、メルセデスを代表するロングセラーだ。この500SLは、その最終期にあたる1989年式。長年の改良を重ねた末の、もっとも熟成した時期の個体ということになる。次々とモデルチェンジを繰り返す今のクルマとは違い、一つの設計をじっくり育て上げた時代の産物。スーパーカー勢とは、そもそも時間の流れ方が違うクルマだ。
5.0L V8は、パワーの数字を誇示するタイプではない。低回転から太く湧き出るトルクで、大柄なボディをいつでも涼しい顔で運んでいく。アクセルを深く踏まなくても十分に速く、急かされる感覚がない。この大排気量ならではの「ゆとり」こそが、500SLの乗り味の核心になる。
500SLのデザインは、派手さではなく「質感」と「時間の重み」で見るものだ。R107らしい直線基調のボディは、流行の曲面美とは無縁で、まっすぐ伸びたボンネットや水平基調のラインに、古き良きメルセデスらしい端正さがある。

フロントグリルの美しい造形、バンパーやモール周りのメッキの質感、角型ヘッドライト。
どれも近づいて見ると、現代のクルマにはない重厚な手触りが伝わってくる。
分厚いドアの建て付け、内装の革やウッドの落ち着いた雰囲気も含めて、五感に訴える造りの良さがこのクルマの本体だ。走行を重ねてきた個体なら、低走行のコレクションとは違う「ちゃんと使われ、生きてきた車」としての説得力が、その佇まいに滲む。
| Lot番号 | Lot.50 |
|---|---|
| 年式 | 1989年式(R107の最終期) |
| エンジン | 5.0L V8 |
| 予想落札価格 | ¥650万〜750万 |
| 落札結果 | 落札 ¥6,993,000(ほぼ予想レンジ内で成約) |
| 見どころ | 18年続いたR107の最終期という熟成した時期の個体(走行・整備履歴は出品情報で要確認) |
レースと、現代限定車の世界
最後は、性能の高さだけでは語りきれない3台。570S GT4はサーキットを走るための道具であり、750S MCL38とGT-R50は、F1の勝利やブランドの50周年といった「物語」を身に纏った現代の限定車だ。今の限定車は、単に速いだけではなく、その背景を所有する意味が大きくなっている。結果は明暗が分かれ、570S GT4と750S MCL38は成約、日本車枠の主役GT-R50は今回不落となった。
McLaren 570S GT4

570Sは、マクラーレンが比較的手の届く「スポーツシリーズ」として送り出したロードカーだ。このGT4は、その570SをベースにGT4規定へ仕立て直した、純然たるレーシングカー。公道を走るための快適装備や豪華さは取り払われ、サーキットで結果を出すことだけに最適化されている。ナンバーを付けて愛でるクルマではなく、走らせるためのマシンになる。
ベースはマクラーレンの3.8L V8ツインターボ。ただし狙いは最高出力の数字ではなく、レースで一日中酷使しても壊れない耐久性と、ドライバーが扱いやすい特性にある。ロードカーのような派手さよりも、決められたレギュレーションの中で確実な速さを求めた。
その実直さが、競技車両のエンジンらしい。

570S GT4のデザインは、「走るための形」が随所に現れている。
ロードカーの570Sがベースだが、車高はさらに低く落とされ、前には大きなフロントスプリッター、後ろには巨大なリアウイングが構える。これらは見栄えのためではなく、すべてダウンフォースと冷却のための機能パーツだ。


室内をのぞけば、内装の快適装備は剥ぎ取られ、剛性を確保するロールケージが張り巡らされている。各部の空力パーツも含め、レーシングカー特有の「飾らない機能美」が全身に宿る。華やかさはないが、走り出す前から漂う緊張感と、無駄を削ぎ落としたマシンらしさが、ロードカーにはない説得力を生んでいる。

| Lot番号 | Lot.55 |
|---|---|
| 年式 | 2019年式 |
| 区分 | GT4規定のレーシングカー(競技車両) |
| 予想落札価格 | ¥1,300万〜1,400万 |
| 落札結果 | 落札 ¥14,430,000(予想レンジ上限を上回る結果) |
| 見どころ | カーボンモノコック由来の本格レーシングカーをこの価格帯で狙える点(仕様・整備状況は出品情報で要確認) |
McLaren 750S MCL38 Celebration Edition

2024年、マクラーレンは実に26年ぶりとなるF1コンストラクターズチャンピオンを獲得した。ノリスとピアストリが駆ったマシン「MCL38」が掴んだ、通算9度目の戴冠だ。
その栄光を記念して作られたのが、このMCL38 Celebration Edition。
750Sは世界でわずか9台のみとされ、この「9」は9度目の優勝にちなむ。出品情報によれば、そのうちの1台が日本に割り当てられた個体とされる。

積まれるのは4.0L V8ツインターボ。現代マクラーレンらしい強烈なパワーを持つが、このクルマの本質はスペックの数字ではない。重要なのは、チャンピオンマシンMCL38の記憶を、どれだけ濃く身に纏っているか。エンジンは速さの土台であって、主役は「物語」の方だ。

このクルマのデザインは、ボディ全体が「F1の記憶」をまとっている点に尽きる。マクラーレンを象徴するパパイヤオレンジに、アンスラサイト(黒)を組み合わせた専用カラーリングは、チャンピオンマシンMCL38をそのまま思い起こさせる配色だ。
だが、本当に見るべきは細部にある。サイドシルのカーボンカバーには、ノリスとピアストリ、二人のドライバーの直筆サインが入る。
さらに、実際のMCL38のボディワーク(カーボン)を組み込んだ専用プレートまで備わり、文字どおり「F1マシンの一部」がこのロードカーに溶け込んでいる。MSO(マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ)による特別な仕立てで、通常の750Sとはまとっている空気がまるで違う。ここを見て初めて、これが単なる限定色ではないと分かる。
| Lot番号 | Lot.58 |
|---|---|
| 年式 | 2026年式(最新モデル) |
| 限定台数 | 750Sは世界9台。出品情報では日本割当の個体とされる |
| 予想落札価格 | 事前非公表だった |
| 落札結果 | 落札 ¥72,150,000 |
| 見どころ | 2024年F1王者MCL38のカーボンを使った専用プレート、ドライバーサイン、MSO仕立てという「物語」性 |
2024 Nissan GT-R50 by Italdesign

このGT-R50は、日産GT-Rの50周年と、イタリアの名門カロッツェリア「イタルデザイン」の50周年、その二つの節目が重なったことを記念して生まれた特別なコーチビルドモデルだ。R35 GT-Rをベースにしながら、外装も内装もほぼ別物と言っていいほど作り替えられている。出品個体はシリアルナンバー17、実際に生産された19台のうちの1台で、右ハンドル仕様になる。世界的に見ても、極めて数の少ない一台。
ベースはGT-RでおなじみのツインターボV6「VR38DETT」。これを大幅に強化し、最高出力はおよそ720ps級ともいわれる強烈なパフォーマンスを発揮する。
素のGT-Rが持つ実直な速さを土台にしつつ、さらに上の領域へ引き上げた心臓だ。日本生まれのメカニズムが、そのまま骨格として生きている。

GT-R50のデザインは、「R35 GT-Rの面影は確かに残っているのに、まるで別のクルマに見える」という不思議な体験をくれる。フロントマスクは薄く鋭くまとめられ、ベースのGT-Rより一段と低い。

それでいて、丸型のテールランプというGT-Rの象徴的なモチーフはしっかり残されていて、後ろ姿には確かにGT-Rの血が流れている。ブルーカーボンが美しくボディに高級コーチビルドらしい華やかさを添える。日本が磨いてきた精緻なメカニズムを、イタリアの彫りの深い造形でもう一度包み直した。

そんな和と伊の同居が、一台の中で成立している。シリアルプレートや作り込まれた内装まで含めて、量産GT-Rとは別格のコーチビルド感が全身から伝わってくる。
| Lot番号 | Lot.59 |
|---|---|
| 年式 | 2024年式 |
| シリアル番号 | #17(出品情報による) |
| 生産台数 | 実際に生産された19台のうちの1台とされる |
| 仕様 | 右ハンドル |
| 予想落札価格 | ¥1.45億〜1.55億 |
| 落札結果 | 不落(UNSOLD)— 予想¥1.45〜1.55億に対し、今回は成約に至らず |
| 見どころ | わずか19台のうちのシリアル#17、しかも希少な右ハンドル個体 |
まとめ

- 今回のBHオークションもただ高額車が並んでいるだけの場ではなかった
- 1台ずつに、時代背景・メーカーの想い・エンジンの個性という物語がある
- 8C、458 Speciale、599 GTO、599 HGTEは、自然吸気エンジンの時代を色濃く感じさせ、結果もいずれも予想を上回って成約した
- PanteraやClio V6は、効率や常識では生まれない自由な発想の面白さを持つが、今回はどちらも不落となった
- ALPINA B3 GT3や500SLは、派手さではなく仕立てや時間で評価され、しっかり成約した
- 570S GT4、750S MCL38、GT-R50は現代のレースカー・限定車のあり方を映し、結果は成約と不落に分かれた
- 最高額は599 GTOの¥203,130,000。一方でGT-R50は不落と、すべてが高値で動くわけではないことも結果が示している
買えるかどうかは、正直、別の話だ。値段だけを並べてしまえば、結局は数字の比べ合いで終わってしまう。でも、歴史やエンジンの音、そして実車で見たデザインという物差しで眺めると、一台ずつがまるで違う表情を見せてくれる。
今回は落札結果まで出そろった。599 GTOのように予想を大きく超えて成約したクルマもあれば、GT-R50やクリオV6のように、今回は新たなオーナーが決まらなかったクルマもある。金額が出たことで、それぞれのクルマに市場がどんな反応を示したのか、というもう一つの見どころが加わった。
BHオークションは、車好きにとって一種の「動く博物館」のような場だと思う。横から、斜め前から、細部まで自分の目で見て、そのうえで結果まで含めて味わえる。買えるかどうかは別として、こうやって眺めて楽しめること自体が、車趣味の大事な時間だ。
出典:2026 McLaren 750S MCL38 Celebration Edition | 株式会社BING

