ウォーターポンプだけではない!パサートの高額クーラント漏れ修理。
今週は車検整備が多く忙しい1週間だった。
先日、一般整備でご入庫していただいたお客様の力になれなかったり車検整備の入庫が多く久しぶりに工場が悲鳴を上げていた。
その一般整備の内容は後ほど紹介させていただくが、今私はBMW、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲンの中古車を探している最中で改めて中古車選びは慎重に選ぶ必要があると感じた。
そのお客様は半年ほど前に輸入車を取り扱ってはいるが専門店ではない中古車屋で購入したとのことだった。。。
今週はこの作業を紹介していく。
2013年式 パサート ヴァリアント エキゾーストワーニング点灯
パサート ヴァリアント エキゾーストワーニング点灯
冒頭でも述べたが問題のパサート ヴァリアントである。
この車両は100万円程度で購入する事が出来たらしく、
今回の入庫以外では助手席エアバッグのON,OFFスイッチの故障があった程度で大きな故障は無かったという。
今回入庫した時の問診内容だが、
「走行中にエンジンがブルブル震えてエンストしてしまった。その時はエンジンは掛かったけど、今回はエンジンが掛からずレッカー搬送となってしまった。」
とご用命をいただき診断に移った。
先ずは工場の前で軽い試走をしたところ直ぐに症状が出た。
エンジンがミスファイヤーしているようにブルブル震えてそのままエンストする症状だった。
何度かエンジンを掛け直してみたが始動不可となり、そのまま手押しでの工場入庫となった。
エンジンが掛かないので最初はイグニッションコイルが劣化してないか簡単な所から確認していく。
今回パサートの原動機はCAXとなる。
スパークプラグは過去の整備記録簿を確認すると10,000km前に交換していたので問題は無さそうだった。
イグニッションコイルを新品入れ替えしてみても症状は改善されず。
診断機でイベントメモリーを確認してみると以下の故障コードが入力されていた。
「シリンダー1~3ノックコントロール コントロールリミットに達した」
「ノックセンサー1 高過ぎる信号」
「カムシャフトポジションセンサー あてはまらない信号」
「フューエルクオリティ 不良」
これらの故障コードからいくつか故障パターンが考えられる。
2.性能の悪いハイオクガソリン(ここで言う性能の悪いハイオクガソリンとは明らかに安いハイオクガソリンを指す)を入れたか、 ごく稀にいるのだがガソリン代を浮かす為にレギュラーガソリンを入れたりしてエンジン内部にダメージを与えノッキングが発生しエンスト。
3.何らかの理由で点火時期がズレている。
4.エンジンECUが故障している。
5.ヒューズやリレー、配線などに問題がある。
とりあえずこの5つに絞って診断を進めていく。
1.センサー交換から進めていく。
代車で同様のエンジンを積んでいるゴルフ6があるのでそちらからセンサーを移植することにした。
結果は何も変わらず。エンジン不始動であった。
2.お客様のカード決済を見させてもらったらエネオスにてハイオクを給油。
なのでこちらも問題無し。
3.点火時期がズレている。
これはエンジンが掛かってからの問題であるので保留。
4.エンジンECUが故障している。
エンジンECUはワイパーアームの根本部分プレナムチャンバーという雨除けカバーの下にエンジンECUが取り付けられている。
結果から先に言うと、
エンジンECUの故障が今回のエキゾーストワーニング点灯の原因と判明した。
実際に写真を見ていただきたいが、エンジンECUのピン部及びコネクタ部が腐食していた。
何故この様な状態になったのか説明していく。
クーラントがエンジンECUまで昇っていき、
コネクタ接続部で電気ショートが起きてしまっていたからだ。
この青緑色になってしまったのは緑青(ろくしょう)という銅が酸化して生成された錆だと思われる。
こうなってしまったのも車両配線は銅線が使用されている。その銅線とクーラントが化学反応し生成されてしまったもので、このコネクタ部の端子は全て腐食された。よってコネクタ全ての配線引き直しが必要になる。
配線の引き直し、エンジンECUの交換が必要なのは分かった。
では一体何処からクーラントが昇ってきたかというとエンジン横に付いているサーモハウジングの水温センサーが取り付けられている。
その水温センサーからの毛細管現象によりエンジンECUへ辿り着いた。
毛細管現象の例として上げると、
コップに水を入れたものと、空のコップを用意する。
両方のコップにヒモを入れておくと、外部エネルギーを必要とせずに水がヒモに染み込んでいき水を入れてあるコップから空のコップへと水が移動する現象の事をいう。
この現象が今回のパサートにも起きていた。
水温センサーは2ピンのコネクターで繋がっている。
水温センサーピン部から徐々にクーラントが漏れ続け配線の被膜内部を通り時間を掛けてクーラントが伝っていきエンジンECUへ辿り着いた後、電気ショートを招いた。
この水温センサーは走行距離が多い車両、10年以上経った車両では必ず確認する項目に私のショップには入っている。
今回入庫したパサートはその水温センサーを予防交換していなかった為にエンジンECU故障、及び配線引き直しという高額修理となってしまった。
お客様との話し合いで修理はせず診断料のみいただき、パサートは廃車手続きとなってしまった。
パサートエンジンECU交換及び配線修理、水温センサー交換見積もりとなる。
・エンジンECU 266,200円 03C 906016 CD 360
・水温センサー 14,300円 06A 919 501A
・Oリング 814円
・ワイヤーハーネス×30 207,900円
(コネクターは60ピンであるが、純正ワイヤーハーネスは両端に端子が付いている為に30個にしてある。各端子まとめての金額で計算)
・エンジンECU コネクター 5,800円
・配線引き直し 80,000円
・エンジンECU 交換 13,400円
合計 618,414円
今回せっかく半年前に購入したばかりの車が廃車になってしまった。
こういった事例を出来るだけ少なくし、
フォルクスワーゲンをこのブログを通して安心に乗っていただく為に今後も少しずつ紹介していきたいと思った。