VWの乾式DSGオイルは本当に交換不要なのか?乾式・湿式の見分け方と交換費用を解説
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ザ・ビートルのDSGオイル交換

「乾式のDSGオイルは交換不要」
整備の世界に入った頃、上司からそう教わった。当時は納得がいかず、実際にメーカーへ問い合わせてみたのだが、返ってきた答えも同じだった。
先に私の考えを書いておく。メーカーの見解は交換不要。ただし私は、60,000km走行または新車から5年経過のタイミングで1度は交換しておいた方がいいと考えている。
この記事では、その理由と、乾式と湿式の見分け方、実際の作業内容と費用をまとめておく。
フォルクスワーゲン ビートル(2012年式)
ミッション
乾式7速DSG
作業内容
DSGオイル交換 (お客様のご要望による)
オイル量
1.7L (湿式より大幅に少ない)
同時作業
スパークプラグ交換 (劣化していたため)
作業費用
合計 39,760円 (2021年時点・参考価格)
乾式7速のDSGオイルについては、メーカーに問い合わせても交換不要という回答だった。上司から教わった内容と同じで、指定された交換サイクルというものが存在しない。
当時の私は納得がいかなかった。オイルが入っている以上、劣化しないはずがないと思っていたからだ。
ただ、乾式と湿式の構造の違いを理解すると、メーカーがそう言う理由も見えてくる。
乾式DSGと湿式DSGは何が違うのか
名前のとおり、湿式はクラッチがオイルの中で作動し、乾式はクラッチが乾いた状態で作動する。この差が、オイルの役割そのものを変えている。
湿式では、クラッチの摩耗粉がオイルの中に混ざる。だからオイルは汚れやすく、摩耗粉を受け止めるためのオイルフィルターが必要になる。後で紹介する見分け方は、この構造の違いを利用したものだ。
一方の乾式は、クラッチがオイルに触れていない。オイルはギヤやベアリングの潤滑に使われるだけなので、湿式ほど汚れない。使用量も1.7Lと少ない。メーカーが交換不要としている背景には、こうした構造上の事情があるのだと思う。
| 乾式DSG | 湿式DSG | |
|---|---|---|
| クラッチ | オイルに浸かっていない | オイルの中で作動する |
| オイルの役割 | ギヤやベアリングの潤滑 | 潤滑に加えてクラッチの冷却 |
| オイルフィルター | 無し | 有り(上部に付く) |
| オイル量 | 1.7L | 乾式より大幅に多い |
| 交換作業 | エンジンオイル交換とほぼ同じ | 温度管理とオイルレベルの調整が必要 |
| メーカー見解 | 交換不要 | 交換サイクルの設定あり |
自分の車が乾式か湿式か見分ける方法
ここが一番知りたい人が多いところだと思う。判別は難しくない。
ボンネットを開けて、トランスミッション上部を見る
バッテリー脇から覗き込むと確認しやすい車種が多い
オイルフィルターが付いていれば湿式
上向きに付くものと横向きに付くものがあるので、角度を変えて探してほしい
フィルターが見当たらなければ乾式の可能性が高い
乾式にはクラッチの摩耗粉を受け止めるオイルフィルターが存在しない
排気量からも当たりが付けられる
ティグアンを除く1,400ccまでの車両は、ほとんどが乾式7速になる
そもそもDSGではない可能性もある。
Up!や2009年以前の年式が古い車両は、通常のAT(オートマチックトランスミッション)が搭載されている場合がある。 DSG前提で油脂や交換サイクルを判断すると噛み合わないので、まず何が載っているかを確認してほしい。
乾式DSGオイル交換の作業内容
乾式の交換作業は、通常のエンジンオイル交換とほとんど変わらない。
湿式のようにオイルの温度管理や診断機によるオイルレベルの細かい調整をする必要がない。ここが湿式との大きな違いになる。

ギヤボックス下部のアルミボルトを外してオイルを排出し、リンクケーブル10㎜ボルトとブラケット、トルクスボルトはT30で固定されており、上部の黒いカバーを外して規定量1.7Lを入れる。それだけだ。
ドレーンのアルミボルトは新品に交換する
このアルミボルトは新品交換が前提の部品になる。 再使用しても、とりあえずは機能してしまうのだが、勧められる方法ではない。
ねじ山やシール面を傷めると、後々の修理費が部品代とは比較にならない金額になる。 部品自体は高いものではないので、交換時に一緒に手配してほしい。
DSGオイル交換にかかる費用
乾式は使用するオイルが1.7Lと少ないので、費用はそこまで掛からない。今回はスパークプラグの交換も同時に行っている。
DSGオイル交換工賃
6,600円
DSGオイル 1.7L G 055512A2
5,000円
DSGオイル交換のみの合計
11,600円
スパークプラグ交換工賃
6,600円
スパークプラグ 03F 905 600A
21,560円
今回の合計
39,760円
※2021年時点の参考価格です。現在の価格を保証するものではありません。
※車種・年式・仕様・部品改定によって金額は変動する。実際の金額は見積を取ってほしい。
DSGオイル交換だけであれば1万円程度になる。湿式の交換費用と比べれば、かなり抑えられる金額だと思う。
それでも私が1度の交換を勧める理由
メーカーが交換不要としていても、ギヤが噛み合って動いている以上、金属同士の接触は起きている。クラッチの摩耗粉が入らないだけで、ギヤやベアリング側の摩耗が無いわけではない。
交換しなければ必ず壊れる、という話ではない。ただ60,000km走行、または新車から5年以上経過した車両については、1度交換しておいた方がトランスミッションは長持ちすると考えている。1万円程度で不安を減らせるなら、悪くない判断だと思う。
| 対象 | 私が勧めている目安 |
|---|---|
| 乾式7速DSG | メーカーは交換不要。60,000km走行または新車から5年経過で1度は交換しておきたい |
| 湿式DSG | 60,000km付近で1度 |
| 最新世代の湿式 | アルテオンやゴルフ8 GTIなど近年の車両は90,000kmで交換推奨とされているが、60,000km付近で1度入れておくのがいいと考えている |
| リブドベルト | 60,000kmまたは5〜6年で1度 |
※メーカーの指定サイクルではなく、当ショップでの整備経験にもとづく私の推奨になる。使用状況によって適切な時期は変わる。
入庫時に一緒に見ておきたい2箇所
走行距離40,000km以上で1日以上お預かりする車両については、ほぼ必ず確認している箇所が2つある。
今回のポロに載っているエンジンは、スパークプラグの劣化が早い。返却した後にエンジン不調でレッカー搬送、という事態を避けるために、プラグとプラグコードの状態は必ず見るようにしている。
今回は劣化が確認できたので、そのまま交換した。DSGオイル交換で預かるタイミングなら、追加の工賃も最小限で済む。
リフトに上げたら、リブドベルトの状態も確認する。当ショップでは60,000kmまたは5〜6年で1度の交換を勧めている。
今回の車両はまだ使えそうな状態だったが、前回の交換から50,000kmほど走行していた。相談の結果、次回の点検時に交換することになった。
オイル漏れや冷却水漏れも、この時に簡単に見ておく。ここまでやっておくと、次に何が来るかの見当が付く。
タチバナのひとりごと
「交換不要」という言葉を、メーカーは車の設計寿命の中で問題が出ない範囲として言っている。 一方でオーナーは、その先も長く乗ろうとしている。 この時間軸の差が、現場と説明書のズレを生んでいるように思う。
どちらが正しいという話ではない。 ただ、自分の車をあと何年乗るつもりなのかで、答えは変わってくる。
まとめ
- 乾式7速DSGのオイルは、 メーカーの見解では交換不要。 指定サイクルの設定がない
- 乾式はクラッチがオイルに浸かっていないため、湿式ほどオイルが汚れない
- 見分け方はトランスミッション上部のオイルフィルター。 付いていれば湿式
- Up!や2009年以前の車両は、そもそもDSGではなくATの場合がある
- 乾式の交換作業はエンジンオイル交換とほぼ同じ。温度管理やレベル調整は不要
- オイル量は1.7L。2021年時点でDSGオイル交換のみなら1万円程度だった
- ドレーンのアルミボルトは新品交換が前提の部品になる
- 私は60,000km走行または新車から5年経過で1度の交換を勧めている
車は40,000〜60,000kmごとに消耗品が出てくる。国産車・輸入車を問わず、この距離に差し掛かったら一度ディーラーや専門店で点検を受けてほしい。
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