ゴルフ7.5 Rとアルテオンのトランスミッション警告!!DSGリコールの原因とオイルポンプの交換を実施
珍しい7速DSGリコール
フォルクスワーゲンの人気モデルであるゴルフ7.5 Rやアルテオンを所有しているオーナー方はトランスミッション警告灯が点灯する不安を感じている方は多いのではないだろうか?

湿式7速DSG搭載車で発生するトランスミッションエラーは過去リコールとして本国から発表された。

今回の記事では本来では正規ディーラー入庫で作業は完了となるのだが、
特別な事情がありショップに入庫したゴルフ7.5 Rの事例を基に、トランスミッション警告灯の原因、DSGリコールの詳細、オーバーホール作業の簡単な紹介をしていきたい。
DSGトランスミッションとは? ゴルフ7.5 Rとアルテオンの特徴
フォルクスワーゲンのDSGは、デュアルクラッチトランスミッションの略で、素早い変速と優れたトルク伝達が魅力。
特にゴルフ7.5 Rは、ハイパフォーマンスモデルとして2.0Lターボエンジンを搭載し、最大出力300PS以上を発揮。
アルテオンも同様に、洗練されたデザインと落ち着いたらラグジュアリーな走りを兼ね備えている。

これらのモデルで採用される湿式7速DSGは、DSGオイルでクラッチを締結・冷却・潤滑する仕組みになっている。
DSGのメリットは、ATのようなスムーズさとMTのようなダイレクト感を両立することできる。
ショップでも湿式7速のメカトロニクスの品質は高いと感じており、今までゴルフ7.5 Rやアルテオンでメカトロニクスを交換した車両は2~3台程度になる。
この台数は乾式7速のメカトロニクスやTDIのメカトロニクスの故障率よりも大幅に低い。
DSGリコールの流れ
数年前に発表されたフォルクスワーゲンのDSGリコールの正式名称は、
7速DSG 補助油圧ポンプに関する
プログラム改修
になる。
このポンプは、ギヤボックス内部のギヤ機構を冷却・潤滑するためのギヤオイルを汲み上げる重要な部品。
しかしリコールの不具合発生として以下の内容が発表されていた。
「7速DSG型自動変速機の補助油圧ポンプにおいて、
組付け時のボルト締め付けが不適切なため、当該ボルトが緩むものがある。
そのため、ギヤボックス故障の警告灯が点灯したり、金属異音が発生し、
最悪の場合、ギヤボックスが破損するおそれがある。」
リコールの流れは以下の通りになる。
1.アップデートの実施
正規ディーラーでソフトウェアアップデートを行い、ポンプの動作を最適化。
2.経過観察
アップデート後、又は1〜2週間様子を見て、警告灯が点灯しないかを確認。
3.警告灯点灯時の対応
トランスミッションエラーが点灯し、故障コードに
P0C2900:トランスミッションオイル用アディショナルポンプの故障コード
が入力された場合はトランスミッションのオーバーホールが必要になる。
分解しオイルポンプの破損がない場合はオイルポンプの交換。
またはポンプが破損し、内部に破片が散らばるとギヤが欠損する。この場合にはトランスミッション全体の交換が必要となる。
ゴルフ7.5 Rのトランスミッション警告灯点灯
今回入庫したゴルフ7.5 Rは走行距離約3.5万kmと比較的低走行であるが、
ダッシュパネルに
エラー:トランスミッション
引き続き走行可能
という警告灯が点灯していた。
このメッセージは、システム異常を検知しつつ即時停止を必要としないトラブルを示す。

幸い、「D」レンジや「R」レンジへのシフトはスムーズで、異音も発生していなかった。
聞いた話だが、過去オイルポンプの内部破損した車両が入庫しトランスミッション内部から金属音がしていた車両もあったという。
今回の車両はそういった症状がなく、ポンプの破損は軽度と判断。
ただし、お客様にリスクを説明し、トランスミッション本体交換の可能性を了承いただいた上でオーバーホール作業に着手した。
低走行車でも発生するこのトラブルは製造ロットによる影響が大きい。
オイルアディショナルポンプ交換
トランスミッション本体を外していく必要があるのでステアリングギヤボックスとメンバーを一緒に取り外す。


これにより、作業スペースを確保すると同時にトランスミッションが下ろし易くなる。
次にプロペラシャフトと左右のドライブシャフトを外し、



エンジンとトランスミッションの固定ボルトを緩め、ミッションマウントのボルトも外して、慎重にトランスミッションを降ろす。


測った事はないのだが、大体4~5時間程度でこの工程まで辿り着く。

トランスミッションを降ろした後はメカトロニクスユニット、オイルフィルター、ベベルギヤボックスを取り外す。

湿式DSGクラッチも慎重に持ち上げて取り外して、ハウジングボルトを外し、シーリングで固着したハウジングをこじりながら分離する。


分離後、ギヤ側とオイルポンプ側に分かれる。
ここでギヤ側の破損を確認するが、幸い整備車両はギヤに異常はなかった。

しかし、オイルポンプを目視検査すると固定ボルト2本が緩んでおり、脱落寸前であった。


今回のリコールはこのボルト緩みが原因で、ポンプが飛び出してギヤ機構を破損させる。

トランスミッションオイルをチェックすると、鉄粉の混入が少なく内部損傷は最小限。
お客様と相談の結果、オイルポンプのみの交換で対応することに決定した。
新しいオイルポンプを装着後、基本調整を実施。変速の違和感や異音がないかをテストドライブで確認し作業は終了した。

このオーバーホール作業の所要時間は、車両の状態により異なるが、通常2~3日程度。
費用は部品工賃代込みで25万円以上かかるが、リコール対応であればディーラーで無償対応可能となる。
まとめ

フォルクスワーゲン ゴルフ7.5 Rやアルテオンのトランスミッション警告灯は、DSGリコールの典型例となる。
今回の事例のように、オイルポンプのボルト緩みの方が珍しく友人の話によるとオイルポンプの内部が飛び出してギヤ機構を破損させた事によるトランスミッション交換の方が多かったという。
当時は部品の供給も遅く3ヶ月以上トランスミッションの到着を待ったオーナーもいたそうだ。
このリコールは、ショップや正規ディーラーの間で大きな話題となった。
リコールが行われているか自身の整備記録簿をチェックしてもらうか正規ディーラーに車台番号を伝えて自身の車両が実施済みか確認していただきたい。
入庫のご案内は現在受け付けていませんが、トランスミッションエラーでお困りの方は気軽にお問い合わせフォーム又はコメント欄にメッセージを送ってください。
