ゴルフやパサート、アルテオンのサーモスタッドハウジングからの冷却水漏れ整備とその交換工賃とは?
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漏れない車両はほとんどない…
この記事を読み終えたら、2Lのペットボトル2本に水道水を入れて、トランクに積んでおいてほしい。
理由は記事の中で説明する。まずはお客様から届いた相談を紹介したい。
「クーラントを足しても2〜3日でまたクーラント警告灯が点灯して、オーバーヒート寸前になってしまう」
1.8L〜2.0Lエンジン搭載車で、当ショップに入庫する冷却水漏れの中でも特に多いのがサーモスタットハウジングからの漏れになる。他の整備工場でも「多くはサーモハウジングからの漏れ」と報告されている。
上から覗いても漏れは見えない。 リフトに上げてアンダーカバーを外さないと分からない位置にある。
社外品は勧めない。 漏れは止まっても、電子制御のサーモスタットが故障してオーバーヒートした車両を数台見ている。
費用は2018年式ゴルフ7.5 GTIの実例で163,207円。 部品代が高く、車検と重なると大きな負担になる。
まず自分の車が対象かを確認する
冷却水漏れはVW全般で起きるが、エンジンによって漏れる場所も部品系統もまったく違う。ここを取り違えると、部品を注文しても付かない。
| 排気量 | 主な漏れ箇所と部品系統 |
|---|---|
| 1.8L〜2.0L | サーモスタットハウジング。部品番号は06K/06L系になる。 この記事の対象 |
| 1.0L〜1.4L | ウォーターポンプ側の漏れが多い。部品番号は04E系で、上記とは別物になる |
※品番の系統が違うため、部品を手配する際は必ず車台番号で照合してほしい。
ボンネットを開けて、下の画像と同じようなエンジンが積まれている場合が今回の対象になる。1.0L〜1.4L系については別記事にまとめてある。
警告灯が点いたら、まずこうしてほしい
この記事で一番先に読んでほしい部分になる。
焦らず、安全な場所に停車する
高速道路走行中であれば、安全を考慮して最寄りのサービスエリアまで自走する
水温計の針がレッドゾーンに近づいたら、広い路肩に停める
ハザードを点灯させる。ここは無理をしないでほしい
エンジンを切り、クーラントタンクの液量を確認する
完全に空で、車両下部からポタポタ漏れているならレッカーを呼ぶ
この状態での自走は諦めてほしい
勢いよく漏れていなければ、常備しておいた水道水を補充する
無ければ近くのコンビニで水を購入する
補充前に30分程度エンジンを冷やし、キャップをゆっくり緩めて圧力を抜く
熱い状態で一気に開けると、熱湯が噴き出す危険がある
補充後、販売店へ連絡して自走で移動する
①オーバーヒートの状態で走行する。 エンジン本体を壊すことになる。
②他ブランドのクーラントを混ぜる。 成分が異なるものを混ぜると、ゲル化して通路を詰まらせる可能性がある。
③ミネラルウォーターを入れる。 ミネラル分が加熱によって結晶化し、冷却系の内部に付着していく。応急処置なら水道水を使ってほしい。
トランクに2Lペットボトル2本を積んでおいてほしいのは、この5番のためになる。高速道路上で警告灯が点いたとき、手元に水があるかどうかで結末が変わる。
なぜサーモスタットハウジングから漏れるのか
まず構造を押さえておきたい。この世代では、サーモスタットハウジングとウォーターポンプが一体のモジュールになっている。他の整備工場でも「サーモスタットのハウジングと一体型」という説明で紹介されている。
だから交換の見積もりには、サーモスタットハウジング本体だけでなくウォーターポンプと駆動用のトゥースベルトが並ぶことになる。「頼んでいない部品まで入っている」と感じるかもしれないが、構造上まとめて扱う部分になる。
サーモスタットハウジングは名前のとおり、内部にサーモスタットが組み込まれている。そしてこの世代のサーモスタットは電気的に制御されている。
従来のサーモスタットは、内部のワックスが水温で膨張して弁を開くという単純な仕組みだった。 決まった温度で開き、下がれば閉じる。それだけの部品になる。
この世代では、そこに電気的な制御が加わっている。 だからサーモスタットハウジングにはコネクターが付いていて、配線が来ている。
走行状況に応じて水温をコントロールすることで、燃費と性能を両立させるための仕組みになる。 つまりこの部品は、単なる弁ではなく制御部品でもある。
この「制御部品でもある」という点が、後で説明する社外品を勧めない理由に直結してくる。
このサーモスタットハウジングは、ハウジングの至る所からクーラントが漏れる。本体から漏れていたり、ガスケットから漏れたりと一定しない。
当ショップの事例では、1.8L〜2.0Lエンジン搭載車の入庫理由として非常に多い箇所になっている。他の整備工場でも「ゴルフやアウディのA3などに使われているこのエンジンは、よく冷却水漏れを起こす」と注意喚起がされていて、この世代に共通する傾向だと考えている。
部品代が高いのも難点で、車検費用と重なると大打撃になる。
診断の話をしておきたい。ここが厄介なところになる。
エンジンルームの上から見ると、クーラントタンクが空になっているのは確認できる。ところが上からではクーラント漏れそのものを確認することができない。
車両をリフトに上げ、アンダーカバーを外すと、オイルが混じったようなクーラントが固まった、結晶のような跡が確認できた。そこから追っていくと、サーモスタットハウジング本体からの漏れ跡に辿り着く。
つまり自分で確認しようとしても、まず見つけられない位置にある。クーラントが減っているのに漏れが見当たらない、という場合は、リフトのある工場で見てもらってほしい。
社外品を勧めない理由
この記事で一番伝えたいのがここになる。
純正部品は高価で、私自身でも渋ってしまう金額だ。半額以下の社外品があると知れば、そちらを選びたくなるのは当然だと思う。
過去に数台あった話になる。社外品に交換してクーラント漏れは解消されたのだが、電気的に制御されているサーモスタットが故障してしまった。
バルブが閉じたままになり、オーバーヒートでレッカー搬送された車両を数台見ている。
金額を抑えて社外品で交換すると、故障リスクを抱え、短いスパンで2度交換する羽目になる可能性がある。
先ほど「この部品は単なる弁ではなく制御部品でもある」と書いたのは、このためになる。漏れという症状だけを見て部品を選ぶと、制御側の品質という観点が抜け落ちる。
他の整備工場で、こういう事例が報告されている。
ウォーターポンプの樹脂製の羽根が破損していた車両で、タイミングベルトと一緒に交換したものの水温が下がらない。さらに調べたところ、サーモスタットの不良で水温が上がり、その熱でウォーターポンプの羽根が傷んだのではないかという見立てだった。
サーモスタットが正しく開かないと、冷却水が循環せずに水温が上がる。その熱が周辺の部品を傷める。1つの部品の不良が、連鎖して他所を壊していくという構図になる。
| 選択肢 | 私の考え |
|---|---|
| 純正部品 | 高価だが、後々のことを考えると勧めたい。 ディーラーで交換した場合、純正部品には2年間の部品保証が付く |
| 社外品 | 価格は半分以下になるが、制御部の故障事例を数台見ている。できる限り避けてほしい |
| 中古品・リビルト品 | 絶対に使わないでほしい。 ここだけは守っていただきたい |
※当ショップでの経験にもとづく私の考えになる。
交換作業の流れ
この交換は、外す部品の数が多いために工賃も高くなる。何をしているのかを見ておいてほしい。
チャージパイプのバンドを緩め、T30トルクスボルト2本を外してパイプを抜き取る
ボルトは車両下部から緩める
スロットルバルブを外す
ここでサーモスタットハウジング本体にアクセスできるようになる
クーラントホース3本を外す
反対側のチャージパイプとラジエーターファンユニットも外す
破損を防ぐため、ラジエーター前には段ボールを被せておく
T30トルクスボルト5本を緩め、正面から手前右側に力を加えて本体を取り外す
クーラントホース内部のOリングも交換する
ここを飛ばすと後悔することになる
新品を組み付け、水温センサーの基本調整を実施する
試走して漏れと水温を確認してから返却する
クーラントホース内部のOリングを交換しないで返却し、1週間後にまたクーラント警告灯が点灯してしまった苦い経験がある。
部品としては数百円から千円台の世界になる。ところがここを飛ばすと、また同じ作業をやり直すことになる。 見積もりに小さなOリングが並んでいるのは、こういう理由がある。
サーモスタットハウジング交換工賃
2018年式ゴルフ7.5 GTI Dynamicでの実例になる。
| 2018年式 ゴルフ7.5 GTI Dynamic サーモスタットハウジング交換 GOLF 7.5 GTI DYNAMIC — THERMOSTAT HOUSING REPLACEMENT | |
|---|---|
| 作業内容・使用部品 | 料金 |
| 工賃 | |
| 交換工賃 | 39,000円 |
| 主要部品 | |
| サーモスタットハウジング 06L 121 111P | 90,000円 |
| ウォーターポンプ 06L 121 012L | 18,792円 |
| トゥースベルト 06K 121 605C | 3,888円 |
| 主要部品 小計 | 112,680円 |
| シール・継手・油脂 | |
| クイックカップリングピース 5Q0 122 291AB | 3,312円 |
| クーラント G 12E 100 M2 | 3,410円 |
| ユニオン 06L 121 131 | 2,376円 |
| Oリング N 907 653 01 | 1,372円 |
| Oリング WHT 004 973 | 1,056円 |
| シール・継手・油脂 小計 | 11,526円 |
| 合計 | 163,207円 |
※当ショップでの実例になる。2025年2月時点で、サーモスタットハウジング本体の価格が3万円程度値上がりしている。
※年式・仕様・部品改定によって金額は変動する。現在の金額は見積を取ってほしい。
この見積書で分かるのは、サーモスタットハウジング本体だけで90,000円を占めているという点になる。工賃39,000円が高く見えるかもしれないが、外す部品の数を考えれば妥当な範囲だと思う。
そして本体価格は値上がりが続いている。先送りにするほど金額が上がっていく部品になっているのが現状だ。
早期発見のためにできること
漏れそのものは自分で見つけられない。ただ減っていることには気づける。
| やること | 内容 |
|---|---|
| クーラントタンクの液量を見る | 月に1度、エンジンが冷えた状態でMIN・MAXの線を確認する。極端に減っていれば漏れの可能性がある |
| 補充した記録を残す | いつ、どれだけ足したかを控えておく。減るペースが分かると、漏れの進行度が見える |
| 駐車場所の地面を見る | クーラントの跡が残っていないか。乾くと結晶のような跡になる |
| 車検や点検で見てもらう | リフトに上げる機会にアンダーカバー内を確認してもらう |
他の整備工場でも「お乗りの方はリザーブタンクをチェックしてあげてください。極端に減っていたら漏れの可能性があります」と呼びかけられている。タンクを見るという習慣だけで、オーバーヒートは避けられることが多い。
タチバナのひとりごと
9万円の部品を勧めるとき、正直こちらも気が重い。純正部品は高価で、私自身が自分の車で払うとなったら渋ってしまう金額だ。
それでも社外品でオーバーヒートしてレッカーされた車を見てしまうと、勧めないという選択肢が無くなる。この部品に関しては、安く済ませた結果が高く付く場面を何度も見てきた。
まとめ
- 対象は1.8L〜2.0L(06K/06L系)。 1.0L〜1.4Lは04E系で別物になる
- サーモスタットハウジングとウォーターポンプは一体構造。見積書に両方載るのはそのため
- この世代のサーモスタットは電気制御。 単なる弁ではなく制御部品でもある
- 社外品は漏れが止まってもサーモが故障し、オーバーヒートした事例がある
- 中古品・リビルト品は使わないでほしい。純正なら部品保証が2年付く
- 上から覗いても漏れは見えない。リフトに上げてアンダーカバーを外す必要がある
- クーラントホース内部のOリングも同時交換したい。飛ばすと1週間で再発した経験がある
- 費用は実例で163,207円。 本体価格は値上がりが続いている
最後にもう一度だけ書いておく。2Lのペットボトル2本に水道水を入れて、トランクに積んでおいてほしい。
この記事を読んだ人が、路上で困らずに済むことを願っている。

