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ゴルフ・ティグアン・パサートなどのTDIエンジンはクーラント漏れに注意。ウォーターポンプの持病とは??

Yuu

ブログ更新が遅れている理由

FROM THE EDITOR

久しぶりのブログ記事更新となる。
とはいえ放置していた訳ではなく最近は過去の人気記事をリライトしたり新しいブログ戦略を練ったりしていて新規記事の作成を後回しにしていた、というのが正直なところ。

改めて昔の記事を見返すと、とても拙い内容で分かりづらく見辛い見るに堪えない記事が多くて頭を抱えた。なので今後はブログ更新は少しゆっくりになるがリライトした記事は「見やすさ」を最優先で整えている。一度目を通したはずの記事でももう一度開いてみてもらえると嬉しい。

さて前置きが長くなったが、今回は私が一押しのフォルクスワーゲンのTDIエンジンに関する故障事例。日本に導入したての2.0L TDIには持病といっても過言ではないウォーターポンプによるオーバーヒートまたはクーラント漏れの症状が発生する。

警告灯が付いたら先ずは安全な場所に

⚠ クーラント警告灯・水温異常が出ている方へ|先に確認したい5項目
  1. 慌てず停車。水温計が振り切る前に安全な場所へ。クーラントポンプ起因なら走行継続でヘッドガスケットを吹く
  2. ボンネット冷却後、クーラントサブタンクの液面を確認。MIN以下なら漏れが進行している
  3. エンジン下回り・タイミングベルトカバー周辺にクーラントの滲み跡(赤やピンク色の液体や結晶)がないか目視
  4. メーターに「冷却水点検」「電動ファン作動」などのメッセージが出ていないか確認
  5. 該当があれば自走を避けて積載車で入庫。正規ディーラーかVW専門ショップへ直行が安全策

※水温異常を無視して走り続けると、ウォーターポンプ単品の話では済まなくなる。最悪エンジン載せ替えコース。

※トランクに2Lペットボトルの水道水を常備しておくと、出先での応急処置に役立つ。この記事を読んだら今日中に積んでおきたい。またはVW指定規格に合うクーラントを事前に積んでおくと安心。

より安心して備えるなら、クーラントを1本積んでおくのがおすすめ。
水道水はあくまで応急用なので、事前に用意できるならVW指定規格に合うクーラントの方が安心。

SWAG フォルクスワーゲン G13 クーラント LLC1L 希釈済 OEM
VW対応 G13クーラント

SWAG フォルクスワーゲン G13 クーラント LLC1L 希釈済 OEM

ブランド:SWAG
品番:33101130
用途:冷却水補充・応急補充用

応急用の水道水だけでなく、VW指定規格に合うクーラントを車内に備えておくと、出先での冷却水不足にも落ち着いて対応しやすくなります。
📖 この記事で分かること
  1. ティグアン・トゥーラン・パサート他、TDエンジンI搭載車の対象範囲
  2. ウォーターポンプ内部「コントロールバルブ」が固着するメカニズム
  3. 初期症状から重症化までの判別チェックリスト
  4. 自分のクルマが対象かを判定するエンジン製造日の読み方
  5. 修理がなぜ「タイミングベルト同時施工」になるのか
  6. 整備士視点での放置リスクと費用感

EA288世代の2.0L TDIエンジンには、ウォーターポンプのインペラ部に「コントロールバルブ(ポンプ トリム/ポンプ アキュムレーター)」が組み込まれている。暖機時には閉じ、暖機後に開いてクーラント循環を許可する、燃費と排ガス対策のためのギミックになる。

このバルブが作動位置のまま固着してしまう個体が一定数存在することがメーカーからも認められている。バルブが閉じたまま動かなくなれば、いくらインペラが回ろうとクーラントは循環しない。結果としてオーバーヒート、あるいはシール部からの漏れに発展する。

EA288 / 2.0L TDI
Tiguan

5N後期 / 2.0 TDI 4MOTION。当店でも事例多数。要点検対象の筆頭。

EA288 / 2.0L TDI
Touran

5T系 2.0 TDI。アイドル時間が長いファミリー使用で症状が顕在化しやすい。

EA288 / 2.0L TDI
Passat / Variant

B8 セダン・ヴァリアントのTDI。要点検対象の筆頭。長距離稼働車は漏れに気付きにくい傾向。

EA288 / 2.0L TDI
Passat Alltrack

クロスオーバー系も同エンジン搭載。点検時期の前倒し推奨。

EA288 / 2.0L TDI
Golf7.5/ Golf7.5Variant TDI

同世代エンジン共用。導入時期によって該当する個体あり。

ポイント: 日本導入初期のクリーンディーゼルTDIに集中している傾向がある。 年式でいうと特に2016〜2019年式の個体は要警戒。 次の「製造日確認」セクションで自分のクルマが対策前か対策後かをはっきりさせる必要がある。

ウォーターポンプ固着でオーバーヒート

ウォーターポンプがなぜ固着してしまうのか、メーカーから直接の発表はないが恐らくウォーターポンプのコントロールバルブのソフトウェアの不具合でシャッターが閉じたままになってしまう。

あるいは、新車時のコントロールバルブはスムーズに動いているが、冷却水の酸化劣化・スケール析出・走行による熱サイクルを繰り返すうち、バルブのスライド部に微細な堆積物が溜まり、ある日「作動位置で固まる」状態になってしまう。

厄介なのは、固着が「閉じ側」で発生するケースだ。エンジンが暖まってもバルブが開かないため、本格的な熱を持ち始めた瞬間にクーラントが循環せず、メーター指針が一気に跳ね上がる。最悪、ヘッドガスケット抜けまで一直線で進む。

こんな症状が出ていたら要警戒

このウォーターポンプ不具合は、いきなり爆発的に壊れるよりも、じわじわと予兆を出してから本症状に至るパターンが多い。実車での見るべき項目をリスト化しておく。

クーラントが結晶化して固まり汚れている
  1. 渋滞や信号待ちなど低速走行で水温計が普段より上がる(高速巡航では症状が出にくい)
  2. ヒーターの効きが鈍い/温風になるまで明らかに時間がかかる
  3. ラジエーターサブタンクが補充してもまた減る
  4. エンジン下回りやタイミングベルトカバーにクーラントのにじみ跡・乾燥結晶がある
  5. 朝イチの始動直後、水温の立ち上がりが妙に早い/妙に遅いなどの違和感

こんな乗り方は要注意: 短距離街乗り中心・チョイ乗りが多い個体、年式は新しくても距離がそこそこ伸びている個体は、 ウォーターポンプからのクーラント漏れの条件が揃いやすい。 「TDIは丈夫だから」と過信せず、車検前後で一度クーラント系統を点検依頼するのが安全策になる。

自分のクルマが対象かどうかを見極める

判断の鍵はエンジン製造日

2019年12月6日を境に最適化されたウォーターポンプを使ったエンジンに切り替わっている。エンジン本体に貼られた製造ステッカーを読めば、対策前後どちらかが判別できるので参考にしていただきたい。

📋 エンジン製造ステッカーの読み方
記載例 19-04-17
通常の読み方 2019年10月13日(日-月-年 の順)
境界日 2019年12月6日以降の製造であれば対策済みエンジン
製造工場 楕円内のアルファベット。S=Salzgitter工場 / G=Györ工場
罠ポイント Györ(G)工場製は 年-月-日 の順に並ぶ。読み違いに注意

つまり、2019年12月6日より前に製造されたEA288 TDIエンジン搭載車は現時点ではノートラブルでも「いつ症状が出てもおかしくない」ので次の車検・点検タイミングで一度クーラント系統を診断してもらうのが賢明だ。

ウォーターポンプ交換

ここが今回の記事で一番伝えたいところかもしれない。このEA288 TDIのウォーターポンプはタイミングベルトで駆動される位置にある。つまりウォーターポンプだけ交換しようとしても簡単にアクセスできない構造になっている。

作業指示書ではないが、おおまかのウォーターポンプ交換の流れを載せておく。

01
エンジンサポート取外し:ツースドベルト ロワーカバーまでアクセスできるよう、補機類を分解していく。
エンジンサポート取外し作業
02
TDC合わせ:クランクシャフトをTDC位置に合わせ、クランクシャフトクランプ T10490 で固定する。
03
テンショナー張力解除:テンショナー固定ナットを緩め、ツースドベルトの張力を抜く。
テンショナー張力解除作業
04
⚠ カムシャフトスプロケット位置合わせ:T10051Aを使用してカムシャフトスプロケットを固定し、カムシャフトボルトを90°緩める。その後、T10492でカムシャフトスプロケットを位置合わせし、位置合わせ後にツースドベルトの取り外しを行う。カムシャフトクランプを反力工具に使うのは絶対NG。カム破損のリスクが極めて高い。
カムシャフトスプロケット位置合わせ作業
05
ハイプレッシャーポンプ位置合わせ:T10051Aを使用し、ハイプレッシャーポンプの固定ナットを90°緩める。その後、T10492でハイプレッシャーポンプを位置合わせする。
06
ウォーターポンプ交換:旧型を外し、対策済みの新型ウォーターポンプを取り付ける。Oリング・ガスケット・冷却水も同時交換。
ウォーターポンプ交換作業 1
ウォーターポンプ交換作業 2
ウォーターポンプ交換作業 3
07
ベルト再装着:新ベルトをクランク→テンショナー→カム→アイドラ→高圧ポンプ→ウォーターポンプ の順で正規ルートにセット。
ツースドベルト再装着作業
08
テンショナー調整:インジケーターをベースプレートのギャップに合わせて規定張力に。各スプロケットボルトは20Nmで仮締め
09
バルブタイミング確認:クランクを回転方向に2回転させてTDCで止め、ロッキングピンが再挿入できるかチェック。ズレていたら再調整。
10
⚠ エア抜き必須:クーラント補充後、ワークショップマニュアル指定の手順でエア抜きを実施。これを怠ると交換しても再オーバーヒートになる。

もしまだ13万㎞付近を超えており、タイミングベルト未交換の個体でこの不具合が出たら、ウォーターポンプ単品ではなくタイミングベルトキット一式(テンショナー・アイドラ・新ボルト含む)で一括交換するのが理にかなっている。ベルトを取り外すのでついでに交換しておくのが理にかなっている。2回払うようなことだけは避けておくべき。

ウォーターポンプ交換工賃

交換工賃の前にクーラント漏れをクーラント補充のみで放置してから入庫した場合と、症状が出始めの段階で対処した場合の費用も参考にしていただきたい。

放置 → 重症化コース
30~80万円~

オーバーヒートによりヘッドガスケット抜け、最悪ヘッド交換・エンジンOH。ウォーターポンプ+タイベル+ヘッド廻りで30万円超は普通に到達する。

早期対処 → 同時施工
8〜14万円

ウォーターポンプ+タイベルキット+クーラント一式の交換。ウォーターポンプだけだと費用は10万円くらい。専用工具を持つVW専門ショップで施工。1日〜1.5日の工程。

ティグアン ウォーターポンプ交換 TIGUAN — WATER PUMP REPLACEMENT 2019年式 / 走行距離:47,683km
部品名・純正部品番号 料金
ウォーターポンプ交換 38,000円
リテーニングクリップ 純正部品番号:04L 253 725 J 1,300円
ウォーターポンプ 純正部品番号:04L 121 011 N 35,000円
ボルト 純正部品番号:N 910 488 04 / 数量:7 3,290円
カラーナット 純正部品番号:038 109 454 A 600円
スクリュー 純正部品番号:N 103 352 07 300円
クーラント 純正部品番号:G 12E100M2 4,500円
税込み価格合計 91,289円

よくある質問(FAQ)

VW TDI WATER PUMP — FAQ
Q1
水温計がまだ正常範囲です。予防交換すべき?
A2019年12月6日以前のEA288 TDIなら、事前に交換しておくのをオススメする。出先でトラブルが発生した場合を考えて改め交換しておくのがベスト。またはタイミングベルト交換のタイミングで一緒に対策品に交換することを強く勧める。タイベルは10万km以上または車歴10年以上が一般的な目安なので、その節目に合わせるのが工賃的にも最も効率がいい。症状が出てから慌てるより、計画的に組み合わせたい。
Q2
ディーラーと専門ショップ、どちらに依頼すべき?
A保証対象になる可能性があるならまずはVW正規ディーラーに相談。保証外と分かった場合、または年式が古くて保証期間外なら、専用工具と知見のあるVW専門ショップの方が工賃面で有利なことが多い。どちらにせよ「TDIのウォーターポンプ」と最初に伝えれば話が早い。
Q3
社外品のウォーターポンプでも大丈夫?
AOEMサプライヤー(INA、Hepu、Pierburg、Mahle等)の対策品なら基本的に問題ない。中身は純正と同等で価格が抑えられる。ただしノーブランドの格安品は避けること。同じ不具合を再現してしまう可能性がある。VW専門ショップが扱うサプライヤー指定品を信頼するのが安全。
Q4
2019年12月以降のエンジンなら本当に大丈夫?
A対策品のウォーターポンプは構造が見直されており、現時点ではオーバーヒートによる同症状再発は確認されていない。ただしウォーターポンプ自体は消耗部品であることに変わりはなく、クーラント漏れの恐れはある。タイミングベルト交換時期になれば対策品でも同時交換が必要。「対策後だから永久に大丈夫」ではない点に注意。
Q5
クーラント漏れに気付かず走り続けたらどうなる?
A最悪のシナリオはオーバーヒート→シリンダーヘッドの歪み→ヘッドガスケット抜け。ここまで進むとヘッド面研+ガスケット交換+場合によってはバルブ廻りまで波及し、ウォーターポンプ単独修理の3〜5倍の費用が掛かる。水温警告が出たら絶対に長期自走を続けないことが鉄則。

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まとめ

🔧 この記事のポイント
  • ティグアン・トゥーラン・パサート他、EA288世代の2.0L TDI搭載車には、ウォーターポンプ内のコントロールバルブが固着する持病がある
  • 固着するとクーラントが循環せず、オーバーヒート・クーラント漏れを引き起こす
  • 判定基準はエンジン製造日 2019年12月6日。これより前は要警戒、以降は対策済み
  • 症状は急発症ではなく「水温が高め」「ヒーターの効きが鈍い」などの予兆から始まる
  • 放置で30〜50万円超のヘッドガスケット抜けコース、早期対処なら8~14万円。差額は3〜4倍
  • TDIは本当に良いエンジン。だからこそ持病を知った上で長く乗ってほしい

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アストンマーティンDB9やマセラティグラントゥーリズモ、メルセデスベンツCクラスを過去に所有し、現在はジャガーFタイプと三菱エクリプスクロスを愛車とする30歳の整備士が運営するブログ「タチバナ記録簿 」。 フォルクスワーゲンのプロショップでフロントスタッフとして働く著者が、輸入車の維持費を安く抑える節約術や日常のメンテナンス、ちょっとした雑談をリアルに紹介。 高校生時代からの車への情熱を交え、初心者からベテランまで役立つ情報を発信。 フォルクスワーゲンのメンテナンスのコツやコストダウン方法を探しているなら、このブログを是非覗いてみてください。

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