ゴルフ6やビートル、ポロのエンジンが止まってしまい再始動できない症状が発生する恐れあり…予防整備として〇〇○を交換すべし。
走行距離が多い車両は特に注意
9月に入りエアコン修理が落ち着いてきたと思っていたら、レッカーで立て続けに2台の車が運ばれてきた。
2台とも共通してレッカーで運ばれてくる内容が
「自宅から出掛けようと思ってエンジンを掛けようとしたが、エンジンが掛からない」
JAFのお兄さん曰くバッテリーは上がってはないようだという事で、私も確認してみるとバッテリーは全く問題なかった。
1台目は「ザ・ビートル」が運ばれ、レッカーから車両を下ろす際にはエンジンが始動し問題なく走行も出来てしまった。
今回の故障診断の難しい所は、症状の再現性なく故障コードが一切入力されないところである。
そしてもう1台レッカーで運ばれてきた車両は「ゴルフ6 ヴァリアント」になる。
この2台に共通する点は、原動機種類がCBZという1.2LのTSIエンジンを積んでいる点である。
またダイレクトイグニッションではなく、プラグコードを使用しているところがやや古い印象のエンジンではあるが、非常に軽量で燃費が良いのが特徴である。
入庫したゴルフ6を診断するとミスファイヤーの故障コードが入力されていた。
シリンダー1,3,4にミスファイヤーが入力されているので、先ずスパークプラグを確認する事にした。
以前にも話をしたことがあるが、このエンジンはフォルクスワーゲンの中でもスパークプラグの劣化が非常に早い。
交換目安は25,000~40,000kmとなり、交換時期を過ぎるとスパークプラグの電極部が著しく摩耗し火花を発生させることが出来ずにミスファイヤーという形で故障コードが入力される。
なのでゴルフ6、ビートル、ゴルフ6に乗っているオーナーはこのスパークプラグの点検がこまめに必要になる。
先ずはボンネットを開けてCBZエンジンが搭載されているか確認して欲しい。
またこのエンジンはスパークプラグの他にプラグコードも劣化してしまう。
その主な原因としてプラグコードがターボチャージャーのクーリングパイプに接触し徐々に配線被膜から内部に熱が伝わり易くなり絶縁体の劣化によって点火不良が起きてしまう。
スパークプラグと同時にこちらも基本的に同時交換しておくのが今後のトラブルを避ける為になる。
ゴルフ6 ヴァリアントは直ぐに返却できるだろうと思い、会社から自宅アパートまで試走で帰宅していた時に事件は突然起きた。
ゴルフ6 ヴァリアントはアイドリングストップが搭載されており、信号待ちの時にアイドリングストップから再始動出来なくなってしまった。
しかもエンジンを掛け直そうとしても全くキーが反応しない…レッカー搬送かと思い、何気なくある部品を叩いたら偶然にもエンジンが掛かりそのままアイドリングストップを直ぐにオフにして会社へ戻った。
そのある部品とは、イグニッショントランスフォーマーというディストリビューターの代わりに点火指示を送る点火装置であった。
その他にも燃料ポンプや燃料フィルターといった部品の可能性もあるがポンプは異常なく燃料フィルターは10,000km前に交換してあった。
よって今回エンジンの始動が困難になった原因はイグニッショントランスフォーマーだと考えていた。
このイグニッショントランスフォーマーは燃料フィルターと同様に故障コードが入力されないのが特徴で今回の決め手となったのが燃料フィルターの交換歴でもあった。
燃料ポンプやインジェクターが不良の場合は故障コードが入力されることが多いが、
「初爆はしない」
「スパークプラグ、プラグコードは交換済み」
「燃料フィルター交換歴あり」
「エンジン始動後に黒煙が出た」
というこの4点からも推測するとイグニッショントランスフォーマーが最も怪しく、
新車時から10年以上、走行距離約83,000kmという点からも交換が必要と判断した。
イグニッショントランスフォーマーの交換は至って簡単でプラグコードを金属製の内張り剥がしや太めのLピックで浮かして手で引き抜き動作を4回繰り返し、その後コネクターを外しトルクスT30で取り付けられているネジを外すと簡単に交換できる。
交換後、お客様から許可をいただき長距離ロードテストを実施し、症状の再発がなかったので車両返却となった。
以下、スパークプラグ、プラグコード、I/Gトランスフォーマーの交換費用になる。
•交換工賃及び診断料等 13,000円
•I/Gトランスフォーマー57,000円 032905106F
•プラグコード 31,000円 03F905409C
•スパークプラグ 21,000円 03F905600A
税込み価格合計 122,000円