ゴルフ7、トゥーラン、パサートのエアコン吹き出し口から風が出ない? 夏本番前にエアコンの基本調整とフラップモーター交換を!
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エアコン吹き出し口から風が出ない?
車齢が10年近くに達すると、車両にはさまざまなトラブルが少しずつ発生し始める。中でもシーズン前に増えるのが、エアコン関連の相談になる。
エアコン自体は効いているのに、希望する吹き出し口から風が出ない。
体温調節がうまくいかず、運転中のストレスになる。冬場にフロントウィンドウの曇りが取れないとなれば、視界の問題として安全にも関わってくる。
この記事では、まず「風が出ない」の原因を切り分けたうえで、フラップモーターの交換事例を2件紹介する。
同じ22,000円の部品なのに、総額が26,000円と57,000円に分かれた理由も説明していく。
特定の吹き出し口だけ風が出ないなら、フラップモーターの故障を疑う。 全ての口から出ない場合は、ブロアモーター側の可能性が高い。
フラップモーターの費用は、どこに付いているかで大きく変わる。 グローブボックスの奥なら約26,000円、ダッシュボードの奥なら約57,000円だった。
交換後は必ず基本調整が必要になる。 部品を付けただけでは終わらない。
「風が出ない」には複数の原因がある
同じ「風が出ない」でも、原因によって費用も作業も大きく変わる。まずは自分の症状がどれに当てはまるかを確認してほしい。
| 症状 | 疑われる原因 |
|---|---|
| 特定の吹き出し口だけ風が出ない | フラップモーター。風の行き先を切り替える部品になる |
| 全ての吹き出し口から風が出ない | ブロアモーター。風を送り出す部品そのものが回っていない |
| 出たり出なかったりを繰り返す | ブロアモーターの寿命が近い状態。内部のブラシ摩耗が進んでいる可能性がある |
| 風量が全体的に極端に弱い | 内外気切替フラップが閉じ側で固着し、吸気口が塞がれている可能性がある |
| 風は出るが冷えない | エアコンガスやコンプレッサー側の問題。フラップとは別の系統になる |
| 吹き出し口から黒いスポンジ片が出る | 内部のスポンジ材の劣化。風向きが安定しない症状につながることがある |
※当ショップの事例と、公開されている他工場の整備事例をもとにまとめたものになる。最終的な判断は診断機での確認が必要になる。
この記事で扱うのは、1つ目の「特定の吹き出し口だけ風が出ない」ケースになる。ブロアモーターについては別記事にまとめてある。
フラップモーターは何をしている部品なのか
フラップモーターは、ブロアモーターが作り出した風を顔、足元、フロントウィンドウ(デフロスター)へと適切に切り替える役割を果たしている。
エアコンユニットの内部には、風の通り道を仕切る板(フラップ)が何枚も入っている。この板の角度を変えることで、風がどこへ流れるかが決まる。その板を動かしているのがフラップモーターになる。
ここが理解のポイントになる。フラップモーターは、回るだけの部品ではない。
オートエアコンでは、温度設定に応じてフラップを中間の角度で止める必要がある。全開か全閉かの2択ではなく、任意の位置で保持しなければならない。
そのために内部には、現在の角度を検出するポテンショメーターという部品が組み込まれている。モーターが動き、ポテンショメーターが位置を伝え、指示された角度で止まる。この繰り返しで風の配分が作られている。
①モーター側の故障。 内部の摩耗などで動かなくなる。フラップが全開または全閉の位置で固定される。
②ポテンショメーター側の故障。 位置が検出できなくなり、正しい角度で止まれなくなる。
診断機で記録される故障コードにも、この違いが表れる。 どちらの場合もモーターASSY交換になるが、コードを見れば何が起きているかが読み取れる。
実際に故障するときは、全閉位置で固定されるケースが多い。希望する吹き出し口から風が出なくなる、という症状になるのはこのためだ。
事例① ゴルフ7・パサート|中央の吹き出し口から風が出ない
ゴルフ7やパサートでよく見られるのが、「中央の吹き出し口から風が出ない」という不具合になる。
エアコンのコントロールスイッチを操作すると、足元やデフロスターからは風が出るものの、真ん中の吹き出し口からは全く風が出ない。
この場合、フロントディストリビューションフラップモーターの故障が疑われる。
| 故障コード | 内容 |
|---|---|
| B109171 | フロントエアディストリビューションフラップモーター コントロールエレメント 固着 |
| B109915 | フロントエアディストリビューションフラップモーター ポテンショメーター 断線、プラスへのショート |
※モーター側とポテンショメーター側、両方のコードが記録されていた。
診断機で作動点検を行ったところ、他のモーターは正常に動作しているのに対し、フロントディストリビューションフラップモーターだけが全く動いていなかった。
さらに配線の電源を点検し、電源供給に問題がないことを確認。ここでモーター内部の不具合が原因だと判断した。
フラップモーターはValeoとDENSOの2社で製造されている。 正常な作動を確保するには、同一メーカーのフラップモーターを取り付ける必要がある。
そのため交換前に、今付いているモーターのメーカーを必ず確認してほしい。 グローブボックスのツメを2箇所解除して、斜め右上を覗くと見える。
※車種によっては、新品のフラップモーターが2社統一されたものもある。
部品を注文してから「メーカーが違って使えない」となると、作業がそこで止まる。ネットで部品を手配する場合は、特にここを先に確認しておいてほしい。
グローブボックス上部のT20トルクスビス3本のうち、左右2本を外す
落下防止のため、真ん中のビスは残しておく
グローブボックス下部のT20トルクスビス2本を外す
特殊工具でインフォメーションECUを取り外す
ミニマイナスドライバーで配線を慎重に外す
ECUがあったスペースの奥にあるT20トルクスビス1本を外す
ライトで照らさないと見えない位置にある
ETCユニットのカバーをプラベラで外し、ユニットを前方に引いて配線を外す
グローブボックスライトは下方向に押して取り外す
左側のダッシュボードパネルをプラベラで外し、T20トルクスビス1本を外す
エアコンコントロールユニットのカバーを下から外し、T20トルクスビス1本を外す
センタートリムをドア側に引っ張る
最後に残していた真ん中のビスを外し、グローブボックスを取り外す
ダッシュボードトリムのツメを解除する
右奥のフラップモーターをT15トルクスビス2本で固定されているので外す
コネクターを解除して交換し、新品を装着する
診断機で基本調整を行う
ここを飛ばすと、部品を替えても正しく動かない
交換と基本調整の後、真ん中の吹き出し口から正常に風が出るようになり、症状は完全に改善された。
事例②:トゥーラン|フロントウィンドウの曇りが取れない
次はトゥーランのデフロスターフラップモーターの交換になる。お客様からの相談はこうだった。
「寒い日にフロントウィンドウの曇りが取れず、視界が悪く怖い思いをした」
エアコンの快適性の問題ではなく、視界の問題になる。デフロスターが機能しない状態での走行は、そのまま事故のリスクに繋がる。この症状は優先度を上げて対応してほしい。
診断機で作動確認を行ったところ、エアコンスイッチの操作に連動してモーターが全く動かないことが確認された。測定値にも変化がない。
この車両では、配線の点検はダッシュボードを下ろさないとできないという事情があった。
そのためモーター本体の不良と仮定したうえで作業を進めている。 配線側の不良である可能性を完全に潰してから着手したわけではない、という点は明記しておきたい。
ハンドル周り、センターコンソール、グローブボックスを取り外す
ダッシュボードを固定しているビスとAピラーのトリムを外す
慎重に進める。トリムは割れやすい
ダッシュボードを下ろす
吹き出し口右側の青い部品にデフロスターフラップモーターが取り付けられている
故障したモーターを外し、新品に交換して配線を接続する
診断機で基本調整を実施する
青いギヤ機構がスムーズに動くことを確認する
ダッシュボードとその他の部品を元通りに組み付ける
故障時の動きは動画で見た方が早い。デフロスターを操作しても、吹き出し口右側の青いギヤ機構が全く動いていない。
交換と基本調整の後は、こうなる。
同じ部品なのに、費用が2倍以上違う理由
ここがこの記事で一番伝えたい部分になる。2件の請求を並べてみてほしい。
2016年式 ゴルフ7|フロントディストリビューションフラップモーター
2018年式 トゥーラン|デフロスターフラップモーター
※当ショップでの実例になる。年式・仕様・部品改定によって金額は変動する。
部品代はどちらも22,000円で同じ。差が付いているのは工賃だけになる。4,000円と35,000円で、31,000円の開きがある。
つまり「フラップモーターの交換」と言われても、金額はどこのモーターかで決まる。見積もりを受け取ったときは、どのフラップモーターなのかを確認してみてほしい。
基本調整とは何をしているのか
フラップモーター交換後は、必ず基本調整が必要になる。ここを説明しておきたい。
先ほど書いたとおり、フラップモーターは内部のポテンショメーターで現在の角度を検出しながら動いている。
ただし「どこが全開で、どこが全閉なのか」という基準を、車両側が覚えていないと正しく制御できない。
基本調整では、診断機からの指示で各フラップを端から端まで動かし、その範囲を車両に学習させている。長期間使用していると、この基準位置がずれてしまうこともある。
部品を付けただけでは、車両は新しいモーターの基準位置を知らない状態になる。 正しい角度で止まれず、症状が改善しないことがある。
自身でフラップモーターの交換を行った場合も、 後日、正規ディーラーかプロショップで基本調整を行ってほしい。
他の工場で報告されている事例
エアコン系のトラブルは、フラップモーター以外にも起きる。他の整備工場が公開している事例も見ておくと、切り分けの役に立つと思う。
| 事例 | 内容 |
|---|---|
| 内外気フラップの固着 | 内気側が閉じたまま停止し、オートエアコンの制御で外気側も閉じられて吸気口が塞がれた。結果として風が出なくなった、というケース |
| ブロアモーターのブラシ摩耗 | 風が出たり出なかったりを繰り返す症状。分解するとブラシの削れた粉が多量に出てくる |
| 内部スポンジ材の劣化 | 吹き出し口から黒いスポンジ片が出る。この症状はニュービートルやゴルフ4といった20年前の車両に多い。 |
※公開されている他工場の整備事例をもとにまとめたものになる。
1つ目の内外気フラップの事例は特に興味深い。吹き出し側ではなく吸気側のフラップが原因で、風が出なくなることもあるということになる。「風が出ない=ブロアモーター」と決めつけると、遠回りすることがある。
シーズン前のセルフチェック
フラップモーターは日常的に動いている部品なので、摩耗や故障が発生しやすい。夏や冬のシーズン前に、自分で動作確認をしておいてほしい。
吹き出し口を1つずつ切り替える
顔、足元、顔+足元、デフロスター。それぞれで実際に風が出るか手をかざして確認する
内外気の切り替えを操作する
切り替えたときに風量や音が変化するか。全く変化がなければ固着の可能性がある
風量を最小から最大まで動かす
段階的に変わるか。特定の段階で止まるならブロアモーター側を疑う
デフロスターを必ず確認する
冬に困ってからでは遅い。夏のうちに動作を見ておきたい
気になる動きがあれば、診断機を使えば正確に特定できる。シーズンに入ってからでは、入庫が混み合って待たされることもある。
タチバナのひとりごと
トゥーランのデフロスターは、ダッシュボードを全部下ろして22,000円の部品を1つ替えるだけの作業になる。作業時間の大半は、部品にたどり着くまでと、元に戻すまでだ。
お客様に工賃を説明するとき、この構造を先に伝えるようにしている。「部品代より工賃が高い」という見積書は、理由が分からないと不信感につながってしまう。
まとめ
- 特定の吹き出し口だけ風が出ないならフラップモーター、 全部から出ないならブロアモーターを疑う
- フラップモーターは内部のポテンショメーターで角度を検出しながら、任意の位置で止まっている
- 故障はモーター側とポテンショメーター側の2種類。故障コードに違いが表れる
- ValeoとDENSOの2社製がある。 交換前に今付いているメーカーを必ず確認したい
- デフロスターが効かないのは視界の問題。優先度を上げて対応してほしい
- 部品代はどちらも22,000円。総額の差はすべて工賃で、どこに付いているかで決まる
- 交換後は必ず基本調整が必要になる。自分で交換した場合も後日受けてほしい
- 吸気側の内外気フラップが原因で風が出なくなることもある
エアコンの不具合は、快適性の問題として後回しにされやすい。ただデフロスターに関しては、視界に直結する。異変を感じたら早めに点検を受けてほしい。
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